吉田麻也選手(左:Photo by Masashi Hara - FIFA/FIFA via Getty Images)
記念撮影時の「OKサイン」で裁判?
ジェスチャーが人を激怒させることもあるのは、なにもこの例にとどまらない。たとえば米国のニュースサイト「WSLS.com」によれば、米国フロリダ州オーランドのユニバーサル・オーランドで、映画『怪盗グルー』シリーズの主人公であるグルーの着ぐるみの中に入っていた人物が、来園中の子どもと記念撮影する際に、「OKサイン」を出していたことが騒ぎになった。
この子どもは黒人と白人の両親の元に生まれたハーフ(ミックス)だった。後でわかったことだが、この人物はその前年にも、ヒスパニック系の子どもと写真を撮るときにOKサインをしていた。そしてなんと2つの家族は共同で、ユニバーサル・オーランドを訴えたというのだ。
米国フロリダ州オーランド、ユニバーサル・オーランド:Photo by Toni Salama/Chicago Tribune/Tribune News Service via Getty Images
ジェスチャーは「意味を着替える」
実は英国BBCが報じたところによれば、ユニバーサル・オーランドの「OKサイン事件」にはある重要な背景があるという。
われわれにとっても馴染みのあるOKサインのジェスチャーが2019年、反差別を掲げるユダヤ系団体である名誉毀損防止連盟(ADL)の「ヘイト(憎悪)シンボルリスト」に加えられたというのだ。トランプ前大統領も演説の際などに多用していた、親指と人差し指を合わせて丸を作り、残り3本の指を立てるこのジェスチャーが、見方によってはOKサインではなく「ホワイト・パワー」を意味する「WP」に見えるから、というのだ。
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このサインが「差別的」「白人至上主義的」とされた発端は、ネット上の匿名掲示板「4Chan」が、メディアや左翼系の人々の怒りを煽る目的で書き込んだオンラインジョークだった。
「ヘイトシンボルリスト」にOKサインが加わった翌年の2020年には、ニュージーランド南部、クライストチャーチのモスク(イスラム教礼拝所)で起きた銃乱射事件で、犯人として起訴された男性の、法廷で手錠をはめられたままの右手がOKサインをしている写真が大きく報道されるなどもした(参考:Christchurch shootings: The rising new threat of far-right violence by BBC)。