難攻不落のSF小説を映像化。「DUNE/デューン 砂の惑星」の魅力


領主としてデューンに移住してきたアトレイデス家だったが、その裏にはこの星の重要な資源であるスパイスをめぐる陰謀が張りめぐらされていた。皇帝は前領主であるハルコンネン家とアトレイデス家を闘わせることで、自らの権力の強化をはかろうとしていたのだ。

皇帝の力も借りてデューンに総攻撃を仕掛けてくるハルコンネン家。この闘いをきっかけに、主人公ポールの運命は激しく変転していくのだが。

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(c)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

「砂の惑星」を舞台にしたバトルシーンはもちろん観るべき価値のあるスペクタクルなのだが、若い頃に原作の自然描写に魅了されたというヴィルヌーヴ監督だけに、茫漠と広がる砂の大地を描いた映像も素晴らしい。

今回の作品を1984年のデイヴィッド・リンチ監督の「デューン/砂の惑星」と見比べると興味深い。もちろんヴィルヌーヴ監督のきめ細かい表現力によるところも大きいが、この間、いかに映像表現が進化してきたかを実証例として観ることができる。いまだからこそ伝説のSF小説の見事な映像化が叶ったのだと実感もできる。

現代にも通じる問題を内包


砂の惑星デューンをアラビア半島に、スパイスを石油に見立てると、現代にも通じる資源争奪戦にも思いが至る。1960年代前半、原作者がそこまで意識していたかははっきりとはしないが、少なくともヴィルヌーヴ監督の「DUNE/デューン 砂の惑星」では、それらを意識させる演出も施されている。

「フランク・ハーバートが小説の中で描いた生態環境は、私にとって、とても新鮮で、詩的で、パワフルだった。彼の自然の捉え方は虜になるほど魅力的だった。植民地主義によって引き起こされた影響や混沌は、20世紀をよく映し出していた」

原作から受けた強烈な印象をこのように語るヴィルヌーヴ監督だが、作品中にもその読書体験が反映されていることは言うまでもない。主人公のポールについても「自分のアイデンティティにもがき、自分の生き方を模索する青年がいる。かつての自分もそうだった」と語り、秘める超能力にめざめ、成長を遂げていく主人公の姿を細心に描いている。

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『DUNE/デューン 砂の惑星』10月15日金曜全国公開(c)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

砂の惑星に暮らす先住民族である「フレメン」についての描き方にも監督自身の深い思い入れが感じられる。雨が降らないデューンの気象状況については、地球環境の問題をも想起させる。もちろん、それらはフランク・ハーバートが原作に描いていたものなのだが、映像作品として結実させたヴイルヌーヴ監督のきめ細かい技巧が生きている。

「私にとってこの作品は、映画へのラブレター。長年、夢見て、思い描き、そして成就させた作品。でも、ひとつの作品に収めるには物語はあまりにも壮大で複雑だ。プロジェクトとしても、私がこれまで手がけてきた作品のなかで、群を抜いて規模が大きく、最も難しいやりがいのある作品だった」

ヴィルヌーヴ監督はこう語るが、実はこの作品は「第二部へと誘う導入部」だとも言っている。確かに主人公ポールの活躍はまだまだ楽しみでもあるし、スパイスを産出する砂の惑星の全容も語り尽くされていない。新作が待たれる映画監督、ドゥニ・ヴィルヌーヴの「DUNE/デューン 砂の惑星」の続編に、さらに期待は募るばかりだ。

連載:シネマ未来鏡
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文=稲垣 伸寿

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