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「デューン 砂の惑星」は、宇宙を舞台にした壮大な物語のため、1965年の刊行当初から映像化は不可能と言われていたが、過去に何人かの映画監督がこの至難の作業に挑戦していた。
なかでも「エル・トポ」(1970年)などの前衛的作品で知られるアレハンドロ・ホドロフスキーは、精緻で完璧な絵コンテ集をつくりあげ映像化を試みたが、上映時間が10時間にも及ぶものだったためハリウッドの映画会社は難色を示し、実現には至らなかった。
その経緯は、後年、「ホドロフスキーのDUNE」(2013年)というドキュメンタリーで明かされているが、このとき描かれた絵コンテや集結したスタッフは、その後に製作される「スター・ウォーズ」(1977年)や「エイリアン」(1979年)などのSF作品に大きな影響を与えている。
1984年にデイヴィッド・リンチ監督で「デューン/砂の惑星」として初めての映画化が実現するが、製作者側から大幅なカットを要求され、作品後半はダイジェスト版のようになっており、監督自身も納得できる作品ではなかったと認めている。
原作は「スター・ウォーズ」の原型か
今回の「DUNE/デューン 砂の惑星」は2度目の映画化となる。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は10代のときに原作を読み、自然の描き方などの詩的な表現に魅了され、この映画をつくることが昔からの夢だったという。
1967年生まれのヴィルヌーヴ監督はカナダのフランス語圏の出身。「灼熱の魂」(2010年)がアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたことをきっかけに、その後ハリウッドで「プリズナーズ」(2013年)、「ボーダーライン」(2015年)、「メッセージ」(2016年)、「ブレードランナー2049」(2017年)と立て続けに話題作を発表、まさに次回作が待たれていた監督だった。
その期待にたがわず、「DUNE/デューン 砂の惑星」は、壮大な宇宙を舞台にした物語のなかにも葛藤する人物たちの心理描写を織り込み、「メッセージ」や「ブレードランナー2049」で見せた鮮明なビジュアルイメージも提示しながら、まさにヴィルヌーヴ監督らしい細部にまで意志を通わせたクオリティ高い作品に仕上げられている。
物語の舞台は遠い未来の1万191年。宇宙帝国の皇帝から命を受け、アトレイデス一家が砂漠におおわれた惑星アラキスに領主として移住するところから始まる。「デューン」とも呼ばれるこの惑星には、宇宙を支配する鍵となる貴重な物質「スパイス」が存在しており、その採掘をめぐり激しい争いが繰り広げられていた。
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主人公はアトレイデス家の息子であるポール(ティモシー・シャラメ)。実は、彼は未来を見通す超能力を秘めており、幻視のなかに登場する女性やこれから起きることの映像が時折頭の中に浮かぶが、それが何なのかはポール自身もまだわかってはいなかった。
「宇宙帝国」に「主人公の超能力」とくれば、どうしても「スター・ウォーズ」を思い浮かべてしまう。この設定は原作にもあるものだが、「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカス監督が、この1965年の小説を参考に作品の着想を得たとしても不思議ではない。