オーガニック大国の立役者、ドイツ「緑の党」の遺伝子と躍進

緑の党 マーティン・ハーン (c) marastäbert


ここ数年、新しいオーガニックの時代を指す言葉として、「オーガニック3.0」というキーワードが世界各国で言われ続けている。オーガニック3.0の時代は、その前の「オーガニック2.0」で有機認証の整備や市場が急激に拡大する中で、認証を取得していない多様な農法や多くの小規模農家が排除されていったことに対する反省から生まれている。

社会全体の環境保全を高めていくためには「排除するオーガニック」であってはいけない。オーガニック3.0の新時代が目指すのは、多様な他者を認め、持続可能な世界を創るために共に歩み、他者にもオーガニックを認めてもらうパラダイムシフトである。

「農業全体のエコロジー化を進めるためには、州内で85%を占める慣行農業を営む生産者の存在を忘れてはいけません。有機ではない一般生産者がいかにして生態系の持続可能性に貢献し、かつ安定収入を得られるかを考え政策に反映させる必要があります」とハーン氏。緑の党もまた、「有機VS慣行」といった二項対立を越えた先に真の環境保全の達成があると考えている。

ドイツ国家を代表する政党に


緑の党がドイツ連邦レベルで議席を勝ち取った1983年、「エコロジーを全面に掲げた政党が世界で初めて国会入りした」と、世界のジャーナリズムの注視を集めた。当時、緑の党は大多数の国民から「かつてない異質な政党」と考えられていたが、約40年経った現在は多くの国民から支持を得て、2021年9月総選挙の結果、ドイツで3番目に大きい政党へと躍進。

緑の党首相候補として選挙戦を戦ったアンナレーナ・ベーアボック氏は、「私たちはこの国を形成する主導的な力になるところまで到達した」と述べた。


アンナレーナ・ベーアボック氏(Getty Imges)

ハーン氏は、「緑の党出身のクレッチュマン州首相が州議会メンバーになってから現在の地位に着くまでには、実に38年という月日が必要でした。政治変革には常に時間がかかります」と構える。その時間の捉え方は、オーガニックの普及、浸透への向き合い方にも通じる。

「オーガニックも数十年という時間をかけて社会全体に広がって行きました。ドイツでその原動力となったのは、市民による草の根運動です」とハーン氏。そして、日本に向けて、「ボトムアップでムーブメントを起こしていく必要があるのではないでしょうか。これからオーガニックが日本で多くの人に支持されていくことを願ってやみません」と語った。

連載:社会課題を解決するオーガニックの秘密
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文=レムケなつこ

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