4億人も中国にはメイク人口がいるのに、2010年代後半までの人気コスメといえば韓国、イギリス、フランス、日本、アメリカのブランドが中心で、中国製品はリストアップされなかった。
17年に創業した「パーフェクトダイアリー」は、「中国には美容を愛する人が多くいる」ことに着目した。共同創業者は、FMCG(日用消費財)のP&G、海外留学やファッション業界で経験を積んだ3人の男性。世界のトップサプライヤーの協力のもと、誰もが手軽に「美」を体現できるコスメブランドを目指した。
それまでの中国にない「高品質」で「クリエイティブ」かつ「驚き、喜ぶような」メイクアップ商品の開発をモットーにスター商品を次々と生み出し、『Harper’s BAZAAR』や『ELLE』などのファッション業界で名誉ある賞を受賞。19年11月11日、ECで一斉セールが行われる「W11」の売り上げは、国内ブランドとしてコスメ部門初の1位に。翌年のW11では一日のブランド累計売上高が6億元(約100億円)を超え、2年連続でコスメ部門の1位を獲得した。
私はこの快挙を耳にして、これまで「国産化粧品は粗悪」と口にしていた中国人女性たちの心理に「いったいどんな変化が起こったのか?」と考えた。しかし、これは意識の変化ではなく、単に年代の問題だと気づいた。
国産化粧品に先入観を抱くのは40代以上。Z世代の若者は、日常的にライブ配信やショートムービーなどでさまざまな情報に触れ、国際的なトレンドに敏感で幅広い視野をもつ人が増えている。彼女たちが、キャッチーでおしゃれ、プチプラ(お手頃価格)がうれしい「パーフェクトダイアリー」を支持しないわけがない。メイクがさらに楽しくなるのだから。
データマーケティングの活用で知られるパーフェクトダイアリーの側でも、オンラインの消費者インサイトに基づき、いま最も人気のある形や色、触感を素早くキャッチ。Z世代の美的傾向とニーズを分析して需要の変化とタイムリーに連動させた製品を開発し、ライブコマースの背後にある巨大なマーケットを日々開拓している。