世界は誰かの「仕事」でできている。金融教育に欠かせない視点とは

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先月、小学生向けに金融教育のイベントを行った。オンラインでの開催だったが、パソコン越しでも積極的に意見を発言してくれる小学生から、筆者自身もさまざまなことを学ばせてもらった。

イベントで筆者は、いちおう「先生」という立場だが、毎回、逆に学びがあるのが嬉しい。今回は、子どもたちが教えてくれた大切なことについて書いてみたい。

お金がグルグル回っている社会


金融教育の基礎としては、まずお金について学んでいくわけだが、小学生とはいえ、お年玉やおこづかいでもらったお金を何かしらのことに使っている。

「みんなはお金をどんな時につかっている?」と質問すると、ほとんどの子どもたちが「買い物をする時にお金を使う」と答える。「そのお金は誰からもらったの?」と聞くと「両親や祖父母から」と言う。「では、両親や祖父母はどのようにしてお金をもらっているのか?」と尋ねると「仕事をして給料としてもらっている」と答える。

「それでは、両親や祖父母に給料を払っている会社はどこからお金をもらっているの?」と聞くと、「さっき答えたように自分たちが買い物をする時にお店(会社)にお金を払うから、そのお金の一部を両親や祖父母(従業員)に給料として払っている」のだと答える。

このように、小学生でもお金が世の中をグルグル回っているということについては、「経済活動」などという難しい言葉は知らずとも、感覚として理解している。主な国内の経済主体は、政府と企業と家計であり、上記のやり取りから察するに、企業と家計の関係は小学生も十分に理解できている。

イベントでは次に、スーパーでチョコレートを買うという具体的な例をもとに小学生への質問を進めていった。

「チョコレートを買う時にはお金を払っているが、そのお金は誰に対して払われているのだろうか」という問いには「レジの人に払う」「チョコレートを売っているスーパーに払う」などの答えが出てきた。

「それでは、そのチョコレートはどのようにしてスーパーで売られるようになったのか?」という質問をすると、最近の小学生はネットですぐに調べられるのか、原材料の調達から加工・輸送までを正確に解答してきた。

チョコレートの原材料であるカカオはガーナやエクアドルで栽培されており、そこで収穫されたカカオの実から果肉と種が取り出され、発酵・乾燥という工程に回される。その後は品質検査を受けてチョコレートの原料加工をする工場へ運ばれていき、最終的に私たちが買うチョコレートという商品として店頭に並ぶ。これらのことを小学生たちは理解していた。

このように、お金を払う代わりに購入できるモノや受けるサービスは、さまざまな仕事の積み重ねによって成り立っているのだ。
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文=森永康平

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