“イルカの経営”で、クリエイティブな組織に
山井は、デザインとは「時代が潜在的に求めているものを可視化すること」だという。
販売店のスタッフなら、顧客の人生をデザインできる。オペレーション周りのスタッフなら、会社の仕組みをデザインできる。「経営者である自分だけではなく、社員ひとりひとりにも“デザイナー”であってほしい」と、山井は社内にメッセージを発信している。
それぞれの社員が良き“デザイナー”であれるよう、組織のデザインには特に強いこだわりを持って臨んでいるそうだ。
「あるとき、『(会長の)太さんはサメの経営で、梨沙さんはイルカの経営ですね』と、ある人に言われたんです。サメはリーダーの後ろに群れがついていく習性がある一方で、イルカはリーダーを中心にその周りに群れをつくるそうです。
それを聞いて、私はまさにイルカの経営タイプだなと思いました。ビジョンやそれを実現するための環境は私がつくりますが、あとは社員に自分の頭で考えて行動してほしい。社員ひとりひとりが主体性をもって働ける組織であることが、クリエイティブな会社でいるための秘訣だと思っています」
スノーピークはクリエイティブな会社でなければならない──。その言葉には、未来をデザインする会社としての矜持が現れているように感じた。
最後に、思い描く未来へ強い信念で歩み続ける山井が、Beyondを目指す女性たちに送るメッセージとは。
「社長就任時にバッシングを受けたときや、自分と父親の経営能力の差を思い知ったときは、正直かなり自信をなくしました。『自分が社長をやる意味ってあるのだろうか?』と。
でも、ものすごく落ち込んだとき、あることに気づいたんです。それは、スノーピークの未来をデザインする仕事は、たとえ社長でなかったとしても、スノーピークの可能性を誰よりも信じている自分にしかできないことだと。その発見をしてからは、自分自身がすごく磨かれました。
それでもできないことは、あると思います。でも、自分にしかできない仕事を見つけてやり続けていれば、見てくれている人は必ずいます。誰かに批判されても諦めずに、自分のやるべきことを信じてやり続けてほしい」