人材、住宅、旅行、結婚などの分野で、企業とユーザー(個人)のマッチングをプラットフォーム化してきたリクルートホールディングス(以下、リクルートHD)。新型コロナウイルス禍により世界中で働き方が変わるなか、特に人材領域では世界トップ級の位置を占めるグローバル企業として成長を続けている。そのリクルートHDが2021年5月、「サステナビリティへのコミットメント」という2030年度までの達成を約束する数値目標を公表した。同コミットメントの制定に尽力した瀬名波文野・取締役兼常務執行役員兼COO(最高執行責任者)に、その狙いを聞いた。
「2020年が絶好のタイミングだと思って、サステナビリティへのコミットメントをきちんと定めようと提案しました」
瀬名波はコミットメントを打ち出した理由を次のように語る。第一には、国連がSDGsの達成を目指す2030年まで、あと10年という時期だったこと。第二に、自分自身が37歳でリクルートHDの取締役に就き、経営者として世界規模で事業の在り方を考える機会が増え、意識が広がったことだ。
瀬名波はいまリクルートHDの本社がある東京と、同社が2012年に買収した求人検索サイト世界最大手である米Indeed(インディード)の本社がある米国テキサス州オースティンを往復する生活を続けている。
「これまで『HR(人材)マッチング領域で世界のリーダーになる』という目標でやってきました。でも仮に〈宇宙〉からの視点で考えると、どの企業が世界一なのかはあまり大きな意味がない。世界一を目指すなかで得られるパワーやテクノロジーで、世の中にどれだけ貢献できるのか、と考えていました」
20年は新型コロナウイルス感染症が世界中に広がった年でもある。職を失った人、働けなくなった人が各地でたくさん出始め、「いまの事業の進め方では足りない、もっと骨太に本業の真ん中で社会へのインパクトを高める活動をしていくことがテーマに浮かび上がりました」
達成が簡単なものはひとつとしてありません
リクルートHDの「サステナビリティへのコミットメント」はESG(環境・社会・ガバナンス)の3テーマについて、それぞれ30年度の達成目標を明らかにしている。
女性比率で見るリクルートのジェンダーパリティ(2021年4月)。従業員こそ50%を超えるか上級管理職に至っては10%にとどまっている。瀬名波は、30年に達成する目標は「非常に高いハードル。でもやるしかない」と意気込む。
環境(E)では「2021年度中に、当社グループの事業活動において、温室効果ガス排出量のカーボンニュートラルを目指す」「2030年度までに、当社グループの事業活動を含むバリューチェーン全体において、温室効果ガス排出量のカーボンニュートラルを目指す」の2点を設定。