ダイバーシティの基本は「意見の多様性」
そんな考えを、瀬名波はグループ内でも説明してきた。
「(就業に関する課題を)本業で解決したい、データやテクノロジーを駆使してどうにかしたいと言うと、若い世代を中心に反応が極めて早くて、プロジェクトに参加したいと手を挙げる人が多くいて驚きました」
最初に石を転がすところまでこぎつけた。「米インディードも『We help people get jobs.(人々が職を得るのを手伝う)』がミッション。動き始めたら早いと思います」と瀬名波は期待を込める。
新しいことを始めて、それを育て伸ばすのはリクルートという企業の文化でもあろう。企業として何かを創る、または何かを生み出す人材を創ることに長けている企業とのイメージがある。「元リク」という言葉もあるように、リクルート出身の起業家も多く、多くの価値を社会に生み出し続けている。
「価値を生み出すにはダイバーシティが重要だと言われがちですが、私は単にいろんな人がいるだけではなくて、『意見のダイバーシティ』だと思っているんです」と主張する。「いろいろな意見が出るようにする、出せる環境を整えるから新しいものをつくり出せる。バラバラな意見をまとめることや、遠慮して意見を言えない人にも発言してもらうためのコミュニケーションコストは確かにかかります。でも、同意した人もしない人も、やろうと決めたからには一丸となって進んでいく。それが組織としてのケイパビリティ(実行力)だと思いますね」。
これから10年、20年と経営者としての人生が続く。「何をしたらワクワクして働けるか、これをやり遂げたと自分が満足できるか」と自分に問うなかで、世界と日本のサステナビリティを高めながら「いろいろな制約のある世の中で、自分の生きたい人生を選ぶ機会を提供する」ことを目指していくという。
せなは・あやの◎経営企画室を経てHR領域で営業を担当したのち、自ら手を挙げ、買収後の英人材派遣会社へ赴任し業績に寄与。2018年にはIndeedに移り国際化に貢献。同年リクルート執行役員、20年に取締役就任。現在はリスクマネジメント、ファイナンス領域など担当。21年より現職。