上司は選ばれる時代 今、上司がするべきこととは

Getty Images

この1年半で、ずいぶんとテレワークやワーケーションが普及しました。それに伴い、マネージャーとメンバーが1対1でコミュニケーションを行う「1on1」も浸透してきたのではないでしょうか。

私はAmazon.com米国本社で事業部長としてチームをマネジメントしていますが、直接かかわるチームメンバーとは週に1度、「上司の上司」「部下の部下」のように職位が2つ異なるメンバーとは月に1度という頻度で1on1の時間を設けています。

最近は、この1on1の時間をいかに使うかで、メンバーからの信頼や仕事の質が変わることを改めて感じるようになりました。つまり、1on1で良い上司か悪い上司かが露呈しうるのです。

そこで今回は、私が1on1で意識していることをシェアするとともに、アメリカで働いていて感じるチームマネジメントのあり方を紹介します。

主役はメンバーである、という意識をもつ


部下との1on1において、「あの件はどうなっているの?」「○○はしてくれた?」というように、自分が話したいことを次から次へと質問していませんか。

限られた時間のなかで効率よく進捗を把握するために、ついついマネージャー主体で1on1を進めてしまいがちですが、むしろ、いかにメンバーにリードさせるかがキーポイントです。

もちろん、新入社員などに対してはある程度リードしていく必要がありますが、1on1に限らず、マネージャーはメンバーのサポート役。つまり、主役はメンバーであるという意識が大切で、実際に全体の8割の時間はメンバーが話しています。

現代のように社会変化が激しく、複雑な状況下においては、メンバーがスピード感をもって専門性を発揮することが成果につながります。

良いマネージャーは、メンバーが何を考えているかを起点にして、話し手ではなく聞き手として1on1を進めていると言えるでしょう。

“How can I help you?” を習慣づける


では、具体的にどのようにしてメンバーに主体性をもたせたらいいのでしょうか。

私は “How can I help you?” という質問を投げかけることを習慣にしています。これは、Amazon.comで働く他のマネージャーも頻繁に使うフレーズで、良いマネージャーほど “How can I help you?” をよく使っているというのが、私の体感するところです。

「今何に困っているの?」、「どういうサポートが必要?」という質問には、2つの効果があります。

1つは、自分がどのようにメンバーを支援できるかを考えるきっかけになること。

もう1つは、メンバーが自ら考える力を養えることです。

“How can I help you?” という投げかけは、メンバーが、どこまで正しく問いを立てられているか、正しい行動をとれているか、上司も含めたリソースを戦略的に使えているか、を確認する試金石になります。

良い状態であれば、「XXの案件でXXの部署と調整しているがリソース不足で進捗が遅れているので、XX氏にエスカレートして優先順位を上げてもらえないか。そのためのデータはこれです」というように、具体的な依頼がきます。

反対に、「特にありません」という状況が続くと、課題設定ができていなかったり、何をしてよいか分かっていない可能性もあるので、具体的な質問等を通してより積極的に関わっていく必要があるという目安にもなるでしょう。

定期的な “How can I help you?” という問いは、メンバー自らが考え、解決策を見出す手助けをするのです。
次ページ > 上司を選ぶ時代、がもう来ている

文=竹崎孝二

ForbesBrandVoice

人気記事