同社がサステナビリティを志向するようになったのは、SDGsがまだ一般的でなかった2016年。それは将来への危機感からだった。
「今日の真実は明日の真実にあらず」
東京センチュリーでCFOの役割を担う取締役専務執行役員経営企画部門長の馬場高一は、自分に言い聞かせるように部下たちに力説する。変化の激しい現代社会において、今日正しいと思ったことが明日も通用するという保証はどこにもない。東京センチュリーは、まさにその言葉を体現してきた。
2009年にセンチュリー・リーシング・システムと東京リースとの合併により誕生した東京センチュリーリースは、2016年10月1日、社名を「東京センチュリー」に変更した。リースを祖業とする同社にとって、「リース」の看板を外すことは大きな決断だったが、リース会計基準の改正やリーマン・ショック等を経て、将来的にファイナンス・リースだけで稼いでいくのは厳しいという危機感があった。社名変更によって、リースの枠にとどまらず新たな事業領域へとかじを切る覚悟が示されたのだ。
それに伴い、経営理念や経営方針も抜本的に見直された。新たに掲げられたのは、「環境に配慮した循環型経済社会の実現」への貢献。つまり、サステナビリティの追求だ。当時はまだ、サステナビリティという言葉が今ほど浸透していなかったころである。SDGsが国連サミットで採択されたのは2015年9月であり、同社の経営理念がいかに先進的だったかがわかる。
しかし、リースという業態を突き詰めると、その発想にたどり着くのは自然な流れだった。
東京センチュリーは情報通信機器、製造設備、自動車、航空機などをリースとして提供しているが、リース契約満了後、それらが顧客から返却されると、中古市場に流通させるか、その価値がない場合は分解して部品や素材としてリサイクルする。リースは、顧客の利便性向上や経済的メリットを提供するために生まれたビジネスモデルだが、図らずも3R(リデュース・リユース・リサイクル)を実践しており、仕組みそのものがサステナブルだったのだ。
「モノの価値に着目し、それをお使いいただくのが我々のレゾンデートル(存在理由)。我々の事業は循環型ビジネスであり、動脈経済だけでなく最終処分の静脈経済まで一貫して携わり、それによって社会を豊かにしていくのが基本方針です」
社名変更後もモノを活用する循環型ビジネスにこだわり、東京センチュリーは事業領域をリース以外へ広げてきた。
山口県萩市のメガソーラー発電所。京セラと共同出資し「京セラTCLソーラー合同会社」を設立。「従来型のリース」の範囲にとどまらず、太陽光の発電事業そのものを運営している。
例えば京セラとの合弁事業では自らが太陽光発電事業者になっている。全国86カ所の発電所で年間約400メガワット(2021年6月末現在)を発電し、社会インフラの一端を担っている。ほかにも社会インフラにかかわる事業が多く、物流施設のリースやデータセンターの運営なども手がけている。