ビジネス

2021.10.11

リースの仕組みこそサステナブル。「SX」の先駆者が語る成功への道

馬場高一 東京センチュリー 取締役専務執行役員 経営企画部門長


また不動産事業では、東京駅前の再開発プロジェクトにも参画。ホテルや大型ホールを共同で運営する計画だ。

東京torchのイメージ図
東京駅前常盤橋プロジェクト「TOKYO TORCH」において、三菱地所と共同しホテルやホールなどの運営を決定。2022年春には、インターコンチネンタルホテルズグループなどと「ホテルインディゴ軽井沢」も開業予定。

同社が重視しているのは、パートナーシップ戦略だ。2020年にはNTTとの資本業務提携を発表。合弁でNTT・TCリースを設立し、国内における金融・サービスの提供や船舶、太陽光発電などの環境・エネルギー分野なども展開している。また、リース車両のEV化を進め、2019年に千葉県で大規模停電が発生した際には、そのEVのバッテリーが非常用電源として活用された。同社は協業を進めることで、インフラ事業や環境ビジネスを推進している。

2009年合併時のセグメント資産残高は、国内のリース取引が8割もあったが、いまやこの分野の占める割合は3割程度にすぎない。コロナ禍で航空機リースやレンタカー事業が苦戦を強いられるなか、NTTや京セラなどとのパートナーシップ戦略による拡大が貢献し、直近の2021年3月期第1四半期決算で増収増益を実現することができたのだ。

CFOに求められるのはCEOと同じ目線


非財務情報の開示も積極的だ。太陽光発電によるCO2削減量などといった事業に関するデータだけでなく、女性管理職数や育児休業取得率など社内に関するデータも開示している。

「財務的価値と非財務的価値はコインの表裏の関係ですが、どちらが表かを決めるべきではありません。一見すると財務的価値が表のようですが、これからは非財務的価値を高めていかなければ企業価値が向上しませんし、企業は存続できません」

サステナビリティを考慮しないことは、いまや経営上のリスクになる。なかでも環境が経営に及ぼす影響は特に大きく、2022年度から、新市場(プライム市場)に上場する企業は、TCFDに沿って気候変動リスクの開示等が求められるようになる。例えば発電事業で太陽光パネルを設置する場合、地滑りによる破損の可能性などを考慮し、設備にかけている損害保険料がどれくらい上昇するかを見越したうえで財務計画を立てなければならない。

カーソリューションズのイメージ画像
EVの法人向けカーリースを加速。温室効果ガス削減への貢献のみならず、災害時には非常用電源として活用でき、ノートPC5台、プリンタ1台、テレビ1台、携帯電話充電器5台の3日分に相当する電力を供給できる。

環境面だけに限らず通常の投資案件についても、目先の利益だけにとらわれずさまざまなことを考慮しなければならない。それには財務的視点が重要だと馬場は言う。

「財務はサステナブルに直結します。その案件の1年先の利益が見込めても、5年後や10年後はどうなのかという、長期的視点で判断しなければなりません。CFOというと金庫番のイメージがあるかもしれませが、『C●O』と名がつく以上、CEOと同じ目線をもっていなければなりません」

それに加えて重要なのは「現場の視点」だという。「私は経営サイドにいますが、現場の人たちがどう考え、お客さまがどういう動きをしているかを、常に対話して把握しなければなりません。現場に真実が隠されているのだから、投資するにあたってリスクを取るべきか否かについて、最後は現場の意見を尊重しなければならないと考えています」
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文=大橋史彦 写真=ヤン・ブース 編集=本間香奈

この記事は 「Forbes JAPAN No.087 2021年11月号(2021/9/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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