その第一歩として、「社員との対話」を通じたカルチャー改革に着手。しかし、対話といっても、従来の型通りのやり方では組織を動かすことはできない。亀澤の考える対話とは、社員と経営陣が距離を縮め、それぞれのさまざまな思いをぶつけ合い、議論し考えを深める場だ。
「議論するなかで、我々は何をすべきなのか、何ができるのか、何をやりたいのかという本質が自ずとわかるはず」。
亀澤自身、グループ会社の若手10人とMUFG の未来について何度も議論する場を設けたほか、ほかの役員も巻き込んで国内外で延べ6万人の社員とタウンホールミーティングを通じて接点をもった。若手の「降格人事があってもよいのでは?」「若手が辞めているが心配ではないか?」といった本音が聞けた。「若いから間違っている。年配だから正しいとは限らない。いろいろな人の意見をどんどん聞く」。こう考える亀澤は、組織の外へも対話を広げ、音楽や農業といった異業種の若い起業家の話にも耳を傾ける。MUFGの変革につながるヒントの吸収にどん欲な姿勢を見せている。
「対話」で得た知見は、経営戦略に落とし込まれている。社会貢献では若手からの声を基に、社員自らがアイデアを考え、その活動や寄付予算を会社が支援する施策「MUFG Soul」を立ち上げた。女性の活躍の場を求める声も女性500人との対話から上がった。課長以上のポストに就く女性はまだ少ないことを受け、23年までに18%に引き上げる目標も打ち出した。
中期経営計画(web版)では、同社が目指す「世界が進むチカラになる」のパーパスを家族のシーンになぞらえた物語としても紹介している。
本特集(Forbes JAPAN本誌・最強のサステナブル企業100社)の総合ランキングにおいては、東証一部上場の全2,189社中9位にランクインしている。「経営戦略と社会課題解決の一体化」を図った結果が反映されたかたちだ。一方で、今後取り組むべき社会環境課題は山積している。
そのひとつ「地球温暖化・気候変動」については、21年5月、2050年までに投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロ、および 2030 年までに自社の温室効果ガス排出量のネットゼロを達成するカーボンニュートラルを宣言。金融サービスを通して気候変動に関する取り組みを加速化していく。
「次の3年間で世界は大きく変わる。いまは明治維新のときのようにガラリと世界が変わる、私たちは、そういう時代の移り変わりのはざまにいる。次の時代はどうなるのか、世界がどう動くのか読み解くチカラがさらに重要になるのです」
かめざわ・ひろのり◎東京大学大学院理学系研究科を卒業後、現三菱UFJ銀行入行。2010年からのMUFG執行役員以降、本部企画担当、米州副本部長を歴任。またデジタル領域でも多くのポストで実績。現在も拡大が続くサ ービスのデジタル化に尽力した。 2020年より現職。