このような右寄りの言論人たちの恐怖が現実のものになる可能性は確かにある。保守系オンラインメディアの多くはフェイスブックを中心に構築されており、高齢化が進むユーザーたちによって、彼らの記事は活発にシェアされている。ニューヨーク・タイムズ(NYT)のデータによると、シャピロとボンジーのフォロワー数はそれぞれ820万人と500万人で、彼らの記事は常に、フェイスブックで最も人気の記事のトップ10に入っている。
有力保守系メディア「ワシントン・エグザミナー」の立ち上げに関わったマシュー・シェフィールドは、「彼らがお金を稼ぐ唯一の方法はフェイスブックであり、彼らのビジネス全体がフェイスブックなのだ」と語る。「彼らのコンテンツは、感情を煽るための誇張されたものであるため、フェイスブック以外では成立しない」と彼は指摘した。
一方でシャピロは、自身のフェイスブックページに投稿した動画で、次のように語っている。「もしもフェイスブックが閉鎖されたり、規制されたりしたら、被害を受けるのはニューヨーク・タイムズでもCNNでもない。苦しくなるのは、我々が運営するようなメデイアだ」
ただし、保守系メディアの運営者たちが並べ立てる不安は、ほとんど根拠を欠いているように見える。そもそも、ホーゲンの証言を利用してフェイスブックを攻撃する具体的なプランを提示した政治家は、まだ存在せず、ブラックバーンが最初に提案したシンプルなアイデアも、彼らが懸念するような道には向かっていない。
さらに言うと、ホーゲンはそもそも保守系の言論を制限しろとは言っていないのだ。彼女は議会で、フェイスブックがレコメンドのアルゴリズムを完全に排除し、代わりに時系列ベースの投稿の表示を行うべきだと述べた。これは、理論的には保守的な投稿とリベラルな投稿が並んで表示されるものになる。
共和党議員と保守系メディアの対立
カリフォルニア大学バークレー校のCenter for Right-Wing Studies(右派研究センター)のローレンス・ローゼンタールは、共和党議員と保守系メディアが対立した別の事例として、新型コロナウイルスのワクチン接種を巡る対立を挙げている。
共和党の指導者の多くが今では、予防接種を受けるよう有権者に呼びかけているにもかかわらず、共和党支持者の間のワクチンへの躊躇はいまだに続いており、その根底には、保守系のネットメディアの反ワクチン的な記事の存在がある。
「共和党の有権者は、以前から右派メディアや、内部告発者として民主党を批判する人の意見に引きずられてきた。その傾向はここ数年の間、ずっと続いている」とローゼンタールは指摘した。