トランプの資産額は339位だった1年前とほとんど変わっていないが、コロナ禍以降では6億ドル減っている。コロナ禍中にはテクノロジー株や仮想通貨などが高騰する半面、不動産王として知られるトランプの資産の大部分を占める大都市物件は低迷し、それがランキングにも反映した。
トランプは1997年から2016年まで、フォーブス400の上位200位以内に名を連ねていたが、2017年に大統領になってからは順位を落とし続け、今年ついにランク外に消えることになった。
トランプが今回の結果を誰かのせいにしたいのであれば、その相手はまず自分自身ということになるかもしれない。5年前、トランプは資産を分散させる絶好の機会を得た。2016年の大統領選挙で勝利したあと、連邦倫理当局から保有する不動産資産を売却するよう促されたのだ。それに従っていれば、トランプは売却によって得た資金を広範なインデックスファンドに再投資し、利益相反を問われることなく大統領に就任できていただろう。
だが、トランプは資産を手放さなかった。当時、その価値は負債を差し引いて推定35億ドルだった。トランプがすべての資産を売却していた場合、相当な額のキャピタル・ゲイン税を支払う必要があった。仮に連邦政府に23.8%、ニューヨーク州に8.8%の最高税率でキャピタル・ゲイン税を支払っていれば、トランプの当時の資産額は11億ドルほど減っていたとみられる。
もしそうしていれば最初は大きな代償に思えただろうが、結果的には報われていたのではないか。たとえば、税金の支払い後に残った約24億ドルを、S&P500種株価指数に連動するインデックスファンドに投資していれば、トランプの資産額は今ごろ45億ドルに膨らみ、現在よりも1.8倍多くなっていただろう。言い換えると、トランプは資産の売却を拒否したことで20億ドル失った計算になる。
トランプはホワイトハウスに入る9日前、トランプタワーで開いた記者会見で誇らしげにこう語っていた。「わたしは自分の企業を経営しながら、同時に政府の運営もできる。こうしたやり方は好きではないが、やろうと思えばできるだろう。こんなことができるのはわたしだけだ」