ビジネス

2021.10.08

「SPACバブル崩壊」を象徴する保険会社Hippo、株価は上場時の半値に

ヒッポの創業者兼CEO アサフ・ワンド(Nicholas Hunt/Getty Images)

2020年の夏、シリコンバレーの住宅保険会社のヒッポ(Hippo)は、空前のフィンテックブームの波に乗っていた。カリフォルニア州パロアルト本拠の同社は、同年7月にRibbit CapitalやDragoneerなどの有名投資家から15億ドルの評価額で1億5000万ドル(約155億円)の資金調達を実施した。

その数カ月後、ヒッポの創業者でCEOのアサフ・ワンドは、SPAC(特別買収目的会社)との合併を通じた株式上場についてバラ色の未来を語っていた。SPACは、独自の事業を持たない空箱の企業(いわゆるペーパーカンパニー)で、上場時には事業の実体を持たず、将来的に有望な会社と合併や買収を行うことを目的に設立される。

しかし、8月4日に上場を果たした同社の株価は、上場初日につけた10ドルから50%以上も下落し、約4.5ドルとなっている。

最初の問題は、ヒッポのSPAC上場のタイミングだった。投資家で元VISA社長のハンス・モリスは、2020年10月のフォーブスの取材に「ユニコーンと呼ばれる企業はすべて、複数のSPACから買収の提案を受けている」と語り、その翌月には三井住友海上火災保険がヒッポと提携し、3億5000万ドル相当の新株予約権付社債を購入して出資していた。

SPACの調達額は、2019年に140億ドルだったが、昨年は830億ドルに上昇し、バブル状態にあった。

ヒッポは2021年3月4日にLinkedInの共同創業者のリード・ホフマンらが支援するSPACとの合併を通じた上場を発表したが、その際の評価額は前回の資金調達時の15億ドルの3倍以上の50億ドルだった。

資産運用会社のAccelerate Financial Technologiesによると、ヒッポが上場を発表したのはSPACブームが頂点に達した時期だったという。その後は当局の監視が強化され、ギャンブルサイトのDraftKingsやEV(電気自動車)メーカーのローズタウン・モーターズなどのSPACが支援する企業が法的な問題に直面し、市場は急速に冷え込んだ。

一方で、投資家はヒッポなどのインシュアテック(保険テクノロジー)関連の企業への投資を控えるようになった。米国では2月の冬の嵐「ウリ」の影響で保険会社が打撃を受け、レンタカー保険に強みを持つレモネードや、自動車保険のルートとメトロマイルの株価は、2月から7月下旬までに約50%下落した。
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編集=上田裕資

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