ネットは世界のすべてを名付けるメガマシン

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今後は世界中の人が利用者になるばかりか、社会に存在する事物それぞれに名前を付けてアクセスするIoTも論議されており、指示された名前の体系の文脈や意味をビジネスや学問が読み解くことが人間の知的活動の中心的課題となっていく。その一翼を担うのが現在のAIで、人間の能力を超えたビッグデータから学習し、世界の本当の姿を探るために活用され進化していくだろう。


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ここ30年ほどのインターネットの進化の起爆剤になったのはWWWだったが、画面でクリックして簡単に世界中の情報にアクセスできる便利さばかりに焦点が当たるが、WWWの本当の意義は、世界中の情報に名前を付け階層的に分類したということに尽きる。

ほぼ無限に増え続けるファイルや対象物に名前を振る最も単純な方法は、1から順番に番号を付けることだ。しかしそれでは、対象がどういう物でどういう関係性を持ったものか分からない。WWWでは階層型のファイルのように、名前を「/」で切って、大分類のルートから、その下の階層へと分かる形で示す形で名前を付けた。

それはオフィスの住所を、「東京都港区麻布A-B-C」と表記したものを、「東京都/港区/麻布/A-B-C」と表記するように、大きな単位から次々と小さな単位へと分かりやすく階層化して特定するための工夫なのだ。

数を数えるように、世界に名前を付ける行為は、実は世界を認識する最初の一歩だ。ある事物とその名前は。ソシュールも指摘するように何の必然性もない。しかし一旦名付けられた事物は、われわれの意識によってアクセス可能になり、それらの意味を問うことができるようになる。

人間の言語の発生の起源についてはさまざまな説があるが、自分の仲間や生活に関係する対象物を区別し、知識を共有するには名付けることが必須だったことから、言葉が生まれたという説には説得力がある。

これからも人類は、世界中のありとあらゆるものに名前を付け、それから理解を始めようとする行為を続けるだろう。以前は考えることもなかった何かに名前を付ける。それは単なる思いつきや偶然の所作のように思えるが、世界の認識の第一歩であり、それをどう付けるかで世界の見え方も変わってくるものなのだ。

連載:人々はテレビを必要としないだろう
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文=服部 桂

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