存在しない言葉で検索合戦
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グーグルはもともと、あるページが他のページにどれだけ参照(リンク)されているかで注目度を判定して、検索結果の表示の順番を決める「ページランク」という手法を使っていた。それは意味がありそうな情報を効率よく探し出すための大きなイノベーションだったが、それを逆手に取る動きも出てきた。
この世に存在しない言葉でいろいろなページを作り、その言葉を連呼したりタイトルに大きく入れたりして、どういうページが上位に表示されるようになるかを実験し、ページランクの仕組みを逆に外から探り出そうとするものだ。
そういえばグーグルがデビューしたての20年近く前に、存在しない名前「ゴッゴル」を使ったページを作って、グーグルで検索した時の順位を競うコンテストが行なわれたことがあった。「ゴッゴル屋」とか「ゴッゴル王子」というありもしない言葉を解説する架空のページが多数作られ、どうすればグーグルに注目してもらえるかと競技者が腕を振るっていた。
しかしグーグルもそんなに簡単に手の内は明かさない。不正な手法を駆使されないよう、ランキングの仕方をいつもカメレオンのように細かく変えているとされ、以前の手法がそのままずっと使えるわけでもない。
検索サービスの検索結果は何百万件にも達する場合もあるが、利用者は表示された最初のページぐらいにしか注目しない。そこで検索サービスに上位にリストしてもらおうとする企業などは、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)と呼ばれる手法でランクアップをコンサルしてくれる会社に頼るようになる。
しかしそれをまた逆手に取っているのがグーグルだ。ページランクをアップさせたければお金を払えばいいというシステムを作ってしまった。ある企業名や製品などのランクを上げるために、検索してもらいたい言葉を入札してもらい一番高値を付けた人のサイトが一番優遇されるという仕組みだ。
最近はコマーシャルで「〇〇〇と検索」とネットで詳しい情報を提供する手法が一般化したが、他社のサイトが出ては意味がない。最近のグーグル広告では、その言葉で確実に検索結果が一番先に来るようお金を払えばセットしてくれるようになった。
ネット広告がラジオ、雑誌、新聞、テレビの4マス広告額を抜いたいま、いままで広告主と広告媒体を仲介していた広告代理店の機能をグーグルや検索会社が持ち始めたことになる。書籍などの流通を仲介していた取次会社を通さずに、出版社がアマゾンと直接契約を結ぶ例も出ており、業界は大きく変化していくだろう。
しかし時代は、目的のキーワード検索で対象ページに行くより、SNSの発達で、自分が意識していなかったウワサのようなバズワードに反応して情報に行きつくソーシャルな利用法が主流になってきた。人々の関心をネットが察知し、無意識のまま目的地に誘導されてしまう時代には、新しいマーケティング手法が求められるようになっていくだろう。