2年ぶりの「世界のベストレストラン50」 日本の3店がランクイン

「ノマ」のレネ・レゼピと高橋惇一


今回のアワードでは、「ポジティブなメッセージを発信し、誰も取り残さない食の未来を作っていくこと」をテーマに掲げた。

コロナ渦中に「世界のベストレストラン50」本部は、メインスポンサーのサンペレグリノと共に、世界的に苦しい状況に置かれた飲食業界の「回復を助けるために」オークションを開催し、ランクインしているシェフやバーテンダーのレシピブックを販売。129万ドル(約1億4000万円)の募金を集め、世界53カ国の200の飲食店などに還元した。

2019年版で世界一だった「Mirazur」のマウロ・コラグレコ氏は、「食の魔法は、経済や国、人の感情をアクティブにすること。それにチャレンジしていきたい」と語った。

サステナビリティも、ジェンダーも


アワードに先立って行われたトップシェフの対談イベント「50 Best Talks」では、2018年にランキング世界一となった「イレブン・マディソン・パーク」のダニエル・フムシェフらが、未来のラグジュアリーな食について語り合った。

フムシェフは、今年5月から店のメニューを全てプラントベースの料理に切り替えた。その理由について「シェフとして、世界一やミシュラン三つ星などのタイトルも手にした。一方で、目の前に食べ物にアクセスできない人が増えている。これまでと同じ料理を作り続けることに疑問を感じるようになった。『これまでそうだったから』というだけの既存のラグジュアリーは、もはや通用しない」と話す。

また、ジェンダーの平等を訴える世界のベストレストランは、厨房における女性の活躍もテーマの一つに挙げている。

授賞式当日に“女性シェフの対話の場”として新しく設けられたのが、飲食業で働く女性のロールモデルとなる提言を行う委員会「Female Advisory Board」だ。

キックオフとして開かれた朝食会には、2019年のアジアのベストペストリーシェフであり、日本からの唯一の参加シェフとなった「été」の庄司夏子氏が招かれたほか、過去に“世界のベストシェフ”に選ばれたペルー「Kjolle」のピア・レオン氏、スロベニア 「Hisa Franko」のアナ・ロス氏が参加。

さらにイタリアの女性シェフで、コロナ禍で増えた家庭内暴力の被害者の女性や難民を雇用して、多くの人に職の場を提供しているイタリア「Viva」のヴィヴィアナ・ヴァレーゼ氏など15人の女性シェフが集い、今後の委員会の運営方法や、子供を持っていかに働き続けるかについて話し合った。


「Viva」のヴィヴィアナ・ヴァレーゼと「été」の庄司夏子

2年ぶりのアワードに出席した日本評議委員長の中村孝則氏は、「ヨーロッパに来てみると、EU内の行き来が自由なことを実感する。日本は外国人が来られない状況が続いているが、そんな中でも順位を落とすことなく日本からのランキングが一店増えたことに安心した」と総括。今回は、コロナ禍で世界的に苦しい状況に置かれた飲食業界の回復を助け、未来への指標を示したいという思いがより多く感じられた授賞式だった。
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文・写真=仲山今日子

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