投機か、コミュニティか? サッカークラブとNFTとファントークンの未来

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「ファンクラブでNFTを活用するといった発想は考えられないでしょうか? 会員番号をNFTで発行するとか、すごく面白いと思うんですよね」

サッカークラブにおけるファンエンゲージメントについての議論で、選手会の弁護士なども務める弁護士、山崎卓也氏が発したアイデアだ。

試合がない日にどう稼ぐか──。スポーツ界最大の課題へのソリューションとしていま、NFTやファントークンに期待が高まっている。8月某日には、それらをいち早く導入したクラブ関係者が「SBA THE BASE」に登壇。事例や課題を共有した。

>> 前編はこちら


流動性のファントークン、固有性のNFT


ファントークンが流動性のあるものだとすれば、NFTは逆で、その価値は非代替性、固有性にある。ファントークンと並んで、新たな収入源の可能性としてNFTが挙げられることも多いが、特徴にこうした違いがある。

スポーツ界隈でNFTが一躍話題となったのは、2020年10月にスタートした「NBA Top Shot」。生みの親であるDapper Labsはその後もUFC(米総合格闘技団体)、ラ・リーガ(スペインプロサッカーリーグ)、そしてNFLともパートナーシップを締結するなど事業を拡大し、大型の資金調達を続けている。

また、MLBでは4月から老舗トレカメーカーのTopps社がNFTカードを販売してきたが、8月にはこのパートナーシップの終了と、新たにファナティクスと契約したことが報じられた。ファナティクスは、ヘッジファンドの巨人と呼ばれたマイク・ノボグラッツが創業した仮想通貨(暗号資産)投資会社のギャラクシー・デジタルと起業家のゲイリー・ヴェイナチャックとともに、デジタル・コレクタブル企業のキャンディー・デジタルのNFT事業に参画。このキャンディー・デジタルは今後、メジャーリーグ公式のNFT経済圏「キャンディーNFT」を構築予定だと発表している。

その他、仏ファンタジーフットボールゲーム企業「Sorare」がラ・リーガに続き、ブンデスリーガ(独プロサッカーリーグ)ともパートナーシップを締結するなど、市場は活況を呈し、日本でもJリーグやパ・リーグ、球団や企業の参入が続いている。


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有価証券として認識されるかどうか


だがすでに米国ではNBA Top Shotは有価証券だという指摘があり、実際に訴訟も起こっている。日米のスポーツビジネスに精通する鈴木友也氏は、NFTやファントークンは有価証券として認識されるかどうかが中長期的に大きな課題と指摘する。

「それぞれにプロコンがあって、有価証券と認識されれば投資の対象となるので、お金も入ってくるし、投資家から新たなファンになってもらえるチャンスも生まれます。一方で、当然IR対応、投資家保護の責任が発生するようになる。これはスポーツ組織にとっては相当重い負担になりますよね。

アメリカでは1950年頃から球団が株式公開をして資金調達をするようになって、2000年頃まで続いたのですが、最終的には株式公開するところがなくなってしまったという歴史があります。

SOX法(米国企業改革法)ができた影響が大きかったのですが、球団が株式として売ってはいるものの、投資家保護責任が生じる金融商品的な価値、リスクを削ぎ落としていく方向に進んでいったんです。譲渡も転売もできない、配当もない、議決権もない。結局、グッズを買っているだけと同じような、制約ばかりの状態になってしまって、みんなやめてしまった。

NFTが同じような道をたどらないためには純粋なファンエンゲージメントの要素が不可欠で、NBA Top Shotも当然そういった点を意識したメニューを備え、“コミュニティ”を上手く形成しています。この楽しまれ方は、ファンタジースポーツ(実在する選手の中から自分の好きな選手を集めて“空想のチーム”を作り、シーズンを通して他の参加者とポイントを競う)に少し似ています」

前編で触れたファントークン同様、NFTでもコミュニティの形成がカギのようだ。


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文=新川諒 編集=宇藤智子

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