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2021.10.07

食品トレーは不要? 脱プラで「ノントレー包装機」の販売台数が3倍に

食品トレーを使用せずに包装された商品(サンプル)/イシダ提供


こうして完成したノントレー包装機は、商品の包装から計量、ラベルの発行までを行う、店舗バックヤード設置型の機械。1分間に11回包装することができ、包装可能サイズは、最大で幅200mm×奥行き180mm×高さ80mm。鶏肉が2〜3切れ入る大きさまで対応する。価格は通常の包装機の半額ほどの定価358万円である。

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ノントレー包装機で包装した鶏肉(サンプル)/イシダ提供

小売店にとっては、食品トレーがない分、1商品の生産コストを約1円安くできるほか、かさばらないので輸送コストも減らすことができる。さらに、従来の「食品トレー+ラップ」の包装と比較した場合、CO2排出量を30%以上削減できるという。こうした性能に、顧客の9割が満足している。

ノントレー包装機の噂はクチコミで全国に広がり、例えば関東エリアでは、オーケー(一部の小型店を除く)やサミットストア(一部店舗)で導入済みだ。

これらのスーパーからは、店頭でノントレー包装の商品を選んで購入する消費者が多いため、売上の向上につながっているとの声も聞く。実際に消費者からは「そのまま冷凍保存できる」「フイルム開いてまな板に乗せれば、まな板を汚すことなく調理できる」「(本来ならトレーに接していて見えない)裏側を確認できる」などといったメリットが挙がっているという。

開発にあたっては、「サイズ展開」のほかに「見た目の綺麗さ」や「シール部分の強度」にこだわった。パッケージの表面に肉汁がついてしまっては、店頭に陳列した時に見ばえが悪い。紙を敷いてずれないようにする手もあるが、調理や冷凍を手軽にできるように、フイルムのみで“綺麗さ”を実現した。シール部分は、肉汁が漏れず、かつ手で破って開けやすいように設計している。

ただ小売店からは、高価格帯の商品に関しては特に「陳列時の見た目が気になる」という意見もある。石田は「黒色のトレーや舟盛りに見えるトレーなど、食品トレーで高級感を演出することができるからです。ノントレーで統一したら管理は楽になるのですが……」と課題も口にする。
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文=田中友梨 写真=小田光二

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