ワクチンパスポートの活用は、コロナ禍の「観光」に何をもたらすのか

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世界各国でワクチンパスポートの制度化が活発になれば、確かに国内外の人々の往き来は再開し、旅行代理店や航空会社は旅行客の戻りを期待できるだろう。

では、さらに進んで、ホテルや旅館や観光地の土産物店や飲食店で、「ワクチンパスポート割引」が、増えてきたらどうなるか。そこには、さまざまな事情でワクチンを打てない人たちの存在が忘れられてしまうように思うのは私だけだろうか。

これらのワクチンパスポートを経済活生化に活用する案には、法的にも賛否両論あり、簡単に「Go!」とはならないとは思うが(思いたいが)、推進している側の人たちは、取り残される少数派の人たちのことについては、どのように考えているのだろう。

ワクチンパスポートと陰性証明の違い


現在の日本では、海外渡航のためのワクチンパスポートは、住民票がある自治体で、無料で取得できる。では、未接種の人は、海外に行けないのかというと、もちろんそうではなく、陰性証明書があれば渡航は可能だ。

入国時の措置については渡航先の国によってさまざまで、例えばフランスの場合は、現在、いわゆるワクチンパスポート(ワクチン接種証明書)と新型コロナウイルス感染症の症状および感染者との接触がない旨の誓約書を提示すれば、入国時の検査や自主隔離は免除される。ワクチン未接種者の場合は、搭乗前72時間以内に受けたRT-PCR検査または抗原検査の陰性証明と誓約書を提示すれば、入国時の検査と自主隔離が同様に免除される。

ちなみにフランスでは、バーやレストラン、百貨店、長距離交通機関、映画館、美術館なの施設や場所でも、「衛生パス」と呼ばれるワクチン接種証明または72時間以内に取得した陰性証明書の提示が義務づけられている。これがないと、そういう場所に行けないということになる。

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違反者には135ユーロの罰金もあるとのことで、ワクチンが打てない、あるいは打たない人は、その都度陰性証明書を取りなさい、街中で比較的簡易にとれますよということになっている。それが面倒ならばワクチンを打ちなさいということなのだろうが、打てない人にとっては、これは相当のリスクだ。

実際、私のパリの知人も、体質的に本当はワクチンを打ちたくなかったが、カフェやレストランに行くのに72時間以内にいちいち陰性証明書を取るのがあまりにも面倒なので、結局、ワクチンを打ったと話していた。
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文=古田菜穂子

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