ビジネス

2021.10.09

高給、出世、競争と訣別すべきは45歳? 後半戦は「実質定年」で

Photo by Kevin Ku on Unsplash


マインドセットは「実質定年」で


マインドセットの切り替えどきだ。

後半戦に追い求めるのは、前半のような「高給」でも「出世」でもない。ガムシャラに働いて会社の業績を上げて、自分と会社を成長させていくには、もう心身が衰えている。

こうした前半戦のモチベーションやマインドを捨て去るのが「実質定年」だ。

仕事人生を終えるのではなく、違う戦い方をする後半戦へとシフトする。

新たなマインドセット、価値観のもとで仕事人生をリスタートさせるのだ。

今度のキャリアパスは自分で決めよう。

何をエンジンにするのかといえば、高給でも出世でもなく、「好きなこと」「楽しいこと」「幸せ」である。好きなことや楽しいこと、幸せの感じ方は人によって異なる。前半戦のように自分と会社の成長を重ね合わせて仕事に邁進したり、いくつかの役職のイスを取り合うような、通り一遍のモチベーションでは動けないからだ。

誰かにとっての好きなことは、あなたにとって嫌いなことかもしれない。

あなたが感じる幸せは、別の誰かには不幸せかもしれない。

ましてや国や会社がいいように言うキャリアパスには当てはまらない。

「いや。自分が好きなこと、楽しいことなんて、今の職場にあるとも思えない。ましてや自分の好きなこと、楽しいことが何かすら、薄ぼんやりとしている」

そう思われる人も少なくないだろう。

ほとんどの人はそうかもしれない。

だからこそ、45歳で頭を切り替えはじめなければならないのだ。
 
70歳まで定年制度が延びたとしても、企業はそれより前に、体力、知力が衰えたのに、給料やプライドが高まったシニア人材を追い出しはじめる。

会社のために捧げてきたキャリアは強制終了になる。そのときになって「さて、どうするか?」では遅いのだ。

「高給」「出世」「競争」からの卒業


ここでもプロスポーツ選手を重ね合わせて考えてみよう。

野球でもサッカーでも、プロ選手は自分を伸ばし、チームを勝たせるため、幼少の頃から練習を重ねる。いいチームに所属して頭角をあらわし、プロになってからもレギュラーに入るため努力する。監督やコーチが目指すチームの戦術に合わせて、自分のプレイスタイルも言われたように変えたほうが、レギュラーとして戦える確率は上がる。こうしてまっすぐにチームのための努力をするのが、そのまま自分の成長と給料とプライドに直結してきたわけだ。

ところが、体力の衰えを感じる年齢になると、そうはいかなくなる。

監督やコーチが求めるレベルのプレイができなくなる。下からの押し上げもあって、レギュラーからは遠ざかる。しばらくしたら戦力外通告を受ける。

「さて、どうするか?」ではもう遅い。

あらかじめ約束された未来が訪れただけだ。それまでにセカンドキャリアの準備をしておけばよかったと後悔する。コーチや監督になるための勉強をしておけば違ったと悔やむ。

いずれにしても、華やかなプロスポーツのグラウンドにはもう戻れないのだ。

ビジネスも同じだ。

「形式定年」が来る前に、次のステージの準備をしなければならない。そのために、これまでの出世と高給とプライドを積み上げるための働き方から卒業する必要がある。具体的なやリ方はあとの章に譲るが、まずはしっかりと自覚してほしい。

「実質定年」とは、人生を最後まで幸せに送る、準備のための定年なのだ。

この定年を自ら設定し、マインドセットを変えられることが、幸せの切符を手にすることにつながる。


郡山史郎(こおりやましろう)◎伊藤忠商事の後、ソニー取締役、常務取締役、ソニーPCL社長を経て2000年同社会長、02年ソニー顧問を歴任。CEAFOM代表取締役社長。ベストセラーとなった『定年前後の「やってはいけない」』)などがある。

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『定年格差 70歳でも自分を活かせる人は何をやっているか』(郡山史郎著、2021年9月、青春出版社刊)

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