経済・社会

2021.10.05 12:00

ヨルダン国王やウクライナ大統領も租税回避 「パンドラ文書」で判明

ウクライナ大統領 ウォロディミル・ゼレンスキー(Stefanie Loos-Pool/Getty Images)

ウクライナ大統領 ウォロディミル・ゼレンスキー(Stefanie Loos-Pool/Getty Images)

国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が新たに入手した資料から、ヨルダンのアブドラ国王やウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を含む世界の政治指導者らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用した取引にかかわっていたことが明らかになった。また、米国の一部の州が外国のタックスヘイブンに並ぶ資産秘匿地になっている実態もあらわになった。

ICIJは金融サービス企業など14社の内部文書1200万件近くを入手し、「パンドラ文書」と名づけた。ICIJに加盟する世界の150報道機関が文書を分析したところ、租税回避の広範なネットワークが浮かび上がった。米紙ワシントン・ポストや英紙ガーディアンなどが報じた。

文書にはオフショア口座2万9000件の取引記録などが記載されている。これらの口座には、ドミニカ共和国やチェコ、モンテネグロ、エクアドル、チリ、アラブ首長国連邦(UAE)、ケニア各国の首脳ら約90カ国の公人数百人のほか、フォーブスのビリオネアランキングに名を連ねる富豪130人あまりのものも含まれる。

ワシントン・ポストによると、プライベート・エクイティ投資で財を成し、米国で最も裕福な黒人であるロバート・スミスの取引記録も詳細に記されているという。スミスは昨年、国外の資金について納税していなかったとされる問題で、罰金など1億4000万ドル(現在のレートで約156億円)近くの支払いに応じている。

パンドラ文書からはこのほか、税の秘密を守る法律が制定されている米サウスダコタ州やネバダ州が、資産の秘匿や保護を望む外国人富裕層にとって、英領バージン諸島などのタックスヘイブン並みに人気の節税地になっていることも明らかになった。

ICIJは2016年に、タックスヘイブンの実態を浮き彫りにした「パナマ文書」について報道。これは当時のアイスランド首相やパキスタン首相の失職につながった。ワシントン・ポストやガーディアンによると、パンドラ文書はパナマ文書よりもさらに膨大だという。

パキスタンのイムラン・カーン首相は、パンドラ文書のなかで言及されている自国民はすべて政府として調査する考えを示し、「不正が確認されればしかるべき処置をとる」と表明した。ワシントン・ポストは、アブドラ国王やロシアのウラジーミル・プーチン大統領にそれぞれ焦点をあてた記事を含め、8本の関連記事を出すと予告している。

編集=江戸伸禎

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