9月にはフロリダ州マイアミの投資会社777パートナーズが、セリエAのジェノアCFCを買収すると発表した。関係者によると、同社はジェノアの株式の99.9%を取得し、チームの評価額は負債を含めて1億5000万ユーロ(約190億円)だという。
これにより、セリエAの全20チームのうち6チームと、セリエBの2チームが米国の投資家によって所有されることになった。これらイタリアの8サッカーチームの経営権を米企業が取得したのは、この3年半のことだ。
投資家側は、イタリアリーグのチームはとくに新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)中に価値が下がったこともあって、ほかのリーグのチームに比べ割安になっていると判断している。777パートナーズのマネジングディレクター、フアン・アルシニエガスはフォーブスの取材に、イタリアリーグは「成長段階から判断して成長性が高いとみている」とコメントしている。
たしかにサッカー市場が上り調子なのは明らかだ。サッカーはグローバルなスポーツであり、市場規模はますます巨大になっている。放送権などの取得争いには新たな企業も参入しており、それによって放送権料が押し上げられる可能性もある。また、最近は非代替性トークン(NFT)のような新しいビジネスチャンスによって、新たな収益源も生まれつつある。
ただ、投資家によると、このところイタリアのサッカーチームへの引き合いが強くなっているのには、それとは別に2つの要因があるという。
1つめは希少性だ。端的に言って、欧州全体をみてもトップクラスのサッカーチームの数はそれほど多くない。また、ドイツのブンデスリーガでは、チームの株式の過半数をファンが保有することが規則で定められているため、投資対象はさらに絞られる。それに対してイタリアリーグでは、財務の悪化を背景に多くのチームが売りに出されている。
2つめの要因は価格だ。英紙フィナンシャル・タイムズによると、2018年に米ヘッジファンドのエリオット・マネジメントがACミランの経営権を握るために支払った金額は約4億ユーロ(現在の為替レートで約520億円)だが、イタリアリーグではパンデミックの影響で売り値が下がっているチームもある。
財政的にもっと安定したプレミアリーグの場合、フォーブスのランキングによると評価額が5億ドル(約560億円)を超えるチームが8つ、20億ドル(約2200億円)を超えるチームも6つある。