同サービスを牽引するココナラ 代表取締役会長 南章行(みなみあきゆき)氏に起業家としての素養、事業立ち上げなどについて、DIMENSIONビジネスプロデューサーの吉田俊也が聞いた。(全4話中3話)
第1話:なぜ、起業家には「自分への深い理解」が必要か
第2話:合理的に見える事業はNG 仮説通りに行くビジネスプランの鉄則
「アンフェア・アドバンテージ」を死ぬ気で考え抜く
──起業には仮説を立て、課題を特定し、それを実際に人に話を聞くことで検証していくスピード感と行動力が圧倒的に必要です。
これは創業初期の頃に、一昨年お亡くなりになられた有名な投資家である瀧本哲史さんに、創業初期の頃、ビジネスアイディアを相談した際に行ったときに言われた言葉が原動力になりました。
「君と同じビジネスプランを持ってきた学生がいたら、そちらに投資する」と言われたのです。
たしかにココナラの創業メンバーはみなそれなりの年齢で、学生に比べると生活費だけでもかなりコストがかかります。そんなメンバーがこんな不透明なビジネスを検証しようと思っても、コストばかりかかってやれることは知れている、と。さらに続けて瀧本さんはこうおっしゃいました。
「そう言われるのが嫌だったら、君には何かあるだろう?アンフェア・アドバンテージが」と。
つまり、学生が真似できないようなことを死ぬ気で考えない限り、君達に投資はできないと言われたのです。そこから、他の人や学生たちにはできない、自分たちだけのアンフェア・アドバンテージが何かを死ぬ気で考えました。
「創業者がNPO出身だからこそスキルを誰かの役に立てたい出品者の気持ちがわかる」「ビジネスに対する知見はあるから、徹底的にビジネスリスクを洗い出して埋めていける」「話を聞くことができる人材ネットワークがたくさんある」
こうやって最初の3カ月は徹底的に自分たちにしかないアンフェア・アドバンテージを探し、学生にも負けない圧倒的行動力とスピード感で、課題を言語化しながら行動することにこだわりました。
これくらいやらないと、世界中で誰も成功していない「総合型スキルマーケット」という難しいビジネスは立ち上がりません。創業前の検証およびシナリオ構築で、勝負の大部分は決まっていたのかなと思います。
「売り手」「買い手」双方の集客法
──マーケットプレイス型の事業は、売り手・買い手双方を集める難易度が高いと言われていますが、その点についてどのように工夫して事業を成長させてこられたのでしょうか?
ココナラは創業から8年経ちますが、今まで売り手を集めるために広告費を使ったことは一度もありません。
先ほど「世間からは非合理に見える真実」(第2話)で言ったとおり、ココナラのような場ができれば自分のスキルを売りたい人は口コミだけでたくさん集まってくる。そしてサービスが進化していくと共に、一流のプロフェッショナルも集まるようになる、というストーリーは計算通りでした。