──ココナラにおいて「世間からは非合理に見える真実」はなんだったのでしょうか。
我々は創業当初「500円均一のスキルマーケット」としてスタートしたのですが、1時間かかるような作業をたったの500円で売るのは合理的じゃないから売り手がいるはずがない、と最初はみんな思っていました。
しかし私たちだけに見えていた真実は「たとえ500円しかもらえなくても、自分のスキルを喜んで売りたい人がたくさんいる」ということ。
──なぜその真実に気づくことができたのでしょうか?
それは創業者である私がNPOをやっていて、お金をもらわなくても楽しく働く人たちを見て、その人たちのモチベーションの源泉に触れていたからです。だからこそ、金額の多寡は初期的には問題にならないということが見えていました。
一方でやってみないとわからない部分もありました。それは「“500円も”オンラインで知らない人のスキルに対して払う買い手がいるか」という部分。この点は様々なテストを繰り返し、実現性を検証していきました。
「最初の1カ月」舞台裏
──現在起業を考えるような人にとって、仮説検証の部分は非常に興味深いと思います。具体的にどのようなことをしたのかお聞かせいただけませんでしょうか?
スキルマーケットをやろうと思いついて、まず最初に画面イメージを作りました。その時点で今のサイトのデザイン原型はだいたい出来ていました。
その後、マーケット上で実際に売り買いされうるサービスを80個ほど考え、それを持って100人にアンケートを取りました。「この中でどれが欲しいですか?それはなぜですか?」と。
そのアンケートの結果、回答が“バラけた”ことで1つめの仮説がクリアになりました。
80個あるサービスの中で数個にニーズが集中してしまうなら、それに特化したサービスを作ればいいという話になってしまいます。しかし我々の仮説は、それぞれのスキル単体では大きなマーケットにならないようなニッチスキルをたくさん集めれば、新しいスキルマーケットを作ることができるというものだったので、ニーズが“バラける”必要があったのです。
さらには、男性と女性とでは、ニーズが大きく異なる傾向にあることも初期のアンケートを通してわかりました。男性は時間を節約するためにお金を使う一方で、女性は「話を聞いてくれる」といった心理的メリットを求める傾向にあったのです。
とにかく100人100様に“バラバラ”のニーズがあったことで、自分たちのスキルマーケットにニーズがあることを確信しました。ここまでのコンセプトメイキング、および文書化に要したのが1週間です。