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5年後、MI6(イギリスの秘密情報部)を離れ、ジャマイカで隠遁生活を送っていたボンドのもとに旧知のアメリカCIA局員、フィリックス・ライター(ジェフリー・ライト)が訪れる。彼からキューバでの重要なミッションに手を貸してくれないかと相談を受け、ついては現地でパロマ(アナ・デ・アルマス)という女性エージェントと連絡をとって欲しいと頼まれる。
そんなボンドのところに、今度は「007」を名乗る謎の女性が現れる。彼女はMI6を退いたボンドの代わりに「007」のコードネームが与えられた新人の諜報部員ノーミ(ラシャーナ・リンチ)であり、その事実がボンドの心の中にざわめきを起こす。ノーミは、ボンドの元上司であるM(レイフ・ファインズ)が、彼に復職を求めているというのだ。
ボンドがCIAのフィリックスから依頼されたミッションは、人間のDNAを利用した画期的な究極兵器を開発したロシアの科学者を救出するというものであり、それには元上司であるMの極秘計画も絡んでいたのだ。科学者が行方知れずとなり、キューバからロンドンのMI6に飛んだボンドは、そこで5年前に別れたマドレーヌと再会することになるが……。
クレイグ・ボンドの完結編
ダニエル・クレイグが「007」からの卒業を宣言している今回の「ノー・タイム・トゥ・ダイ」は、物語の流れからもわかるように、主人公であるボンドと彼が愛したマドレーヌとのラブストーリーが全般に敷かれている。
もちろんシリーズの見どころであるアクションシーンもふんだんに盛り込まれており、舞台もイタリア、ジャマイカ、キューバ、イギリス、ノルウェーと移り、最後は日本海に浮かぶ孤島にたどり着く。変わらずのダイナミックでスピーディーな展開は、シリーズ最長の2時間44分、退屈することはない。
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加えて、ヒロインであるマドレーヌとの愛憎の模様が、クレイグが演じてきたボンド像に決定的な陰影を刻んでいく。アクションシーンにも深い味わいを与えており、いわばクレイグ・ボンドの完結編ともなっているのだ。彼自身も次のように語っている。
「最初の『カジノ・ロワイヤル』が、(イアン・フレミングの)原作としては第1作目なので、ぼくはジェームズ・ボンドになったところから始めた。なので、自分の考えやいろいろな感情をボンドに入れ込んでいくことができた。このキャラクターは複雑だから面白い。ジェームズ・ボンドとは誰なのか、15年かけてやっとわかるようになった」
このクレイグの達成感を表明している言葉どおり、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」は、シリーズに区切りをつける作品ともなっており、意外な結末も用意されている。興味を削いでしまうので、詳しくは明らかにしないが、ダニエル・クレイグの卒業作品としては、まさにふさわしいものとなっているかもしれない。