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シネマ未来鏡

今作でボンド役を卒業するダニエル・クレイグ (c) 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

ようやく「007」シリーズの最新作、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」が公開となった。とにかく、この映画ほどコロナ禍の直撃を受けた作品はなかったのではないだろうか。

正規のシリーズとしては25作目となるこの作品、当初は2020年2月に全世界で公開されると予告されていた。しかし、ヨーロッパでコロナ禍による被害が顕著となったため、イギリスやアメリカそして日本では4月に延期された。

その後も新型コロナウイルスの感染拡大は一向に収まらず、公開予定は11月へ、さらに2021年の4月へと何度も後ろ倒しになり、日本ではこの10月1日にやっと公開を迎えることとなった。

こうした度重なる公開延期もあり、作品に対する渇望感はひとかたならぬものがある。しかしそれ以上に、この作品が、「007」ことジェームズ・ボンドを演じるダニエル・クレイグにとってはシリーズからの「卒業作品」となることも、新作に対する期待感を増幅させていた。

新たなボンド像をつくったD・クレイグ


シリーズ第1作「007 ドクター・ノオ」(1962年)のショーン・コネリーから数えて6代目となるダニエル・クレイグがジェームズ・ボンド役に就いたのは、2006年の「007 カジノ・ロワイヤル」から。その後、主演5作目となる「ノー・タイム・トゥ・ダイ」まで、クレイグは人間としての葛藤や愛に悩む男の姿などを通して、これまでにない新たなボンド像をつくりあげてきた。

実は、「カジノ・ロワイヤル」から始まり、「慰めの報酬」(2008年)、「スカイフォール」(2012年)、「スペクター」(2015年)、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」と続くクレイグ・ボンドの「007」では、それまでの1話完結のかたちから、作品を重ねるごとにストーリーが関連していく、ひと繋がりの物語を意識してつくられている。

公開された最新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」も、「スペクター」で愛を交わす関係となったマドレーヌ・スワン(レア・セドゥ)とともに、ボンドが愛車アストンマーティンで走り去る前作のラストシーンを受けるかたちで幕を開ける。


レア・セドゥ演じる、マドレーヌ・スワン (c) 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

洞窟住居で有名な南イタリアの町マテーラに、アストンマーティンでやってきたボンドとマドレーヌ。この町には、クレイグ・ボンドの第1作「カジノ・ロワイヤル」で、結婚を考えながらも死別したヴェスパー・リンドの墓があり、ボンドは過去に別れを告げてマドレーヌとの新生活を始めるため彼女の墓に詣でる。

ボンドはそこで自分を狙うスペクターの徴しを見つけ、その瞬間、仕掛けられた爆弾が破裂する。九死に一生を得たボンドは、急いでマドレーヌのもとに戻ろうとするが、途中、敵の待ち伏せに遭い、激しい闘いとなる。高い丘の上にある狭いマテーラの町を舞台に繰り広げられるアクションシーンは、序盤の掴みとして圧巻だ。

窮地を脱したボンドは、自分の行動が筒抜けだったこと、敵が言い残したマドレーヌとスペクターの関係についての疑念から、彼女に別れを告げることになる。

文=稲垣伸寿

映画
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