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2021.10.01

女性活躍で群を抜くパソナ、南部靖之CEOの「サステナブル発想」とは

パソナグループCEOの南部靖之


経営の軸となる2つのキーワード


創業時には、父から「利益と社会貢献を両輪にして、前に進みなさい」という言葉をもらった。南部はこの言葉を胸に、創業当時から利益を追い求めるだけでなく「社会全体に貢献する」という姿勢を貫いている。

それは、パソナの「社会の問題点を解決する」という理念にも現れている。「創業当時は周りの経営者から『こんな理念聞いたことがない』『ボランティア組織?』などと揶揄されましたが……。欧米では基本的な道徳とされている“ノブレスオブリージュ”(社会的地位を持つ者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある、という意)と同様の考え方です」

そんな南部が何度も口にするのが「ロングセラー」と「三方良し」。この2つのキーワードが、パソナのサステナブル経営の軸になっている。

「ロングセラー」とは、短期間で高い売上をあげる“ベストセラー”な企業ではなく、50年も100年も社会から必要とされ続ける企業のこと。「三方良し」は “売り手・買い手・世間、すべてに貢献できてこそ良い商売だ“という、いわずと知れた近江商人の経営哲学だ。

これらを実践するために南部は、「経営幹部のバランス」を重視してきた。若いころに重視したのは、年齢的なバランス。「当時は、若さゆえに暴走してしまわないように、定年退職者など年齢の高い方を積極的に迎え入れていました。役員会のメンバーは40〜55歳の方が多かったですね」

近年は、経済人と文化人のバランスを重視するようになった。役員の半分は、行政や大学など文化・芸術分野の出身者とし、もう半分は実業経験のある者とした。「役員会の力は、二分化する必要があると考えています。経済人は数字を追い求めますが、文化人は国家を論じますよね。様々な視点に立って考えられるからこそ、ロングセラーな経営ができるのです」

そしてもちろん、男女のバランスも意識する。「家に帰ったら、奥さんも子どもいるのに、なんで会社は男ばっかりなのだろう、と思うのです。若者も高齢者もいて、男もいれば女もいる、といった職場環境にすべきです」。特に役員会においては、女性が男性にありがちな“イケイケドンドン”な姿勢を引き締める役割を担うことも多く、重要な存在になっている。
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文=田中友梨

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