適切なビジネスモデルの選択:これは確かに差別化要素になり得る。だが、市場が変化するにつれて、ビジネスモデルを進化させる必要が生じることもある。
「メールチンプはフリーミアム・モデルの力を実証する好例だが、サービス開始時からこのモデルを採用する必要はないことを示す例でもある」とレムキンは述べる。
「メールチンプは、なかなかフリーミアム・モデルに移行しなかったが、このモデルを採用するやいなや、同社のビジネスは飛躍的な成長を遂げた」
フリーミアム・モデルが市場にディスラプティブな影響を与えることは実証されており、この点は留意しておこう。メールチンプが同モデルに移行した時点では、この市場分野はかなり成熟しており、コンスタント・コンタクト(Constant Contact)という支配的な企業が存在していた。
あえて時流の逆を行く判断:今をときめく市場分野に進出したくなるのは人情だ。こうした分野の成長性は確かに魅力的であるうえ、資金調達や人材の確保も、成長分野では一般的により容易になる。だがその反面、注目が集まる分野では新規参入者が増え、競争が激化する。そのため、多くのライバルの中で差別化を図るのが難しくなるおそれがある。
言い換えるなら、時流にあえて逆らうほうが、成功をつかみやすい可能性があるということだ。だがもちろん、この判断は「満たされていないニーズが市場に存在する」との読みに基づいたものでなくてはならない。
実際、メールチンプもまさにこうしたケースだった。
CRVのゼネラルパートナー、ムラト・ビチェル(Murat Bicer)は、「『メールは死んだ』といった物言いは常に存在するが、実際にはメールは、ちょうどハロウィーンを題材にしたホラー映画でよくある展開のごとく、あらゆる死亡宣告をかいくぐって生き延びている」と述べる。
「メールは、各人の『ツールボックス』にとって不可欠な要素であり、毎年途方もない額の資金が費やされている。賢いCEOやマーケティング担当者は、多様なオーディエンスとのあいだで意味あるコミュニケーションの形を作り上げていくには、さまざまなツールが必要であることを心得ている。これは、腕利きの職人が、ハンマーだけでなく、多くの道具を駆使するのと同様だ」