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2021.10.02

メールチンプの買収劇から起業家が得られる4つの教訓

(c)mailchimp

インテュイットは9月13日、メールマーケティング業界のトップ企業、メールチンプを120億ドルで買収することで合意したと発表した。

SaaS関連のコミュニティを運営するSaaStrの創業者兼最高経営責任者(CEO)のジェイソン・レムキンはメールチンプについて、「ブートストラップ型の非公開スタートアップとしては、クラウド業界で最大の成功を収めた企業だ」と評価する。

メールチンプの始まりは、2001年にさかのぼる。当時、同社の2人の創業者はウェブデザイン事務所を経営し、事務所のウェブサイトも自分たちで構築していた。そこで提供していたサービスの一つが、メールで送れるグリーティングカードだったが、特に評判を呼ぶことはなかった。

しかし興味深いことに、このサービスはある成果を残した。グリーティングカードに使われていたキャラクターの中で、最も人気があるものの一つがチンパンジーだったのだ。そこで2人はこのチンパンジーを、メールチンプのブランドキャラクターとして採用した。とはいえ2007年前後まで、メールチンプは2人にとって、ほぼサイドプロジェクトという位置づけだった。

そして現在、メールチンプは全世界で1300万人のユーザー基盤を持ち、月間アクティブユーザー数(MAU)は240万人を数える。このうち有料会員は80万人で、その半数は米国外の顧客だ。売上高で見ても、2020年には8億ドルと、前年比で20%近く成長している。

では、このメールチンプのサクセスストーリーから、他の起業家が得られる教訓にはどのようなものがあるだろうか? 以下に検証していこう。

人工知能(AI)の活用:サービス自体はシンプルにも見えるメールチンプだが、実は、製品プラットフォームには洗練されたオートメーション・プロセスが組み込まれている。これに加えてメールチンプは、自社が保有する巨大なデータセットを最大限に活用している(これは、インテュイットが同社を買収する決め手となった理由の一つでもある)。

メールチンプでは、700億件の連絡先データを集めたうえに、AIを活用したオートメーションシステムを擁し、これを使ってAIドリブンの予測を毎日220万件生成している。

「ブートストラップ」戦略の採用:ベンチャーキャピタルからの資金調達が史上最高額に達している今、彼らの支援を仰がずに低予算で事業を立ち上げるブートストラップ型の起業は、時流にそぐわないように見えるかもしれない。だが現実問題として、ベンチャーキャピタルからの資金調達に適している企業はごく少数だ。支援を求めてベンチャーキャピタルを追いかけることで、貴重な時間を無駄に過ごしてしまう起業家は、実はとても多い。

Cloud Apps Capital Partnersのゼネラルパートナー、マット・ホレラン(Matt Holleran)は、こう指摘する。

「ソフトウェアのカテゴリーでは多くの場合、チャンスを形にするにはブートストラップ戦略を用いるべきであり、ベンチャーキャピタル企業の支援を頼るケースは少ない。それは、獲得可能なグローバル市場の規模(がそれほど大きくない)からだ」
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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