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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介

ライブコマースの隆盛を背景に、中国のEC界に地殻変動が起きている。旺盛な消費の担い手は90年代後半以降生まれ。新しいマーケットに対して企業が求められる条件は?


スマホ先進国の中国では、ネット上のライブ配信を介して買い物する「ライブコマース」の勢いがすさまじい。

中国最大のECセール「618」に向けて、通称「口紅王子」と呼ばれるトップインフルエンサーの李佳奇(リー・ジャーチー)がライブ配信した予約販売日には1億人以上が殺到。彼はコスメの特徴を熱心なトークと実演で解説後、「さぁ、これは買うしかないよ。みんなで購入ボタンを押そう。3、2、1……ハイ!」。同時に数百万、数千万の指がスクリーン上を走る。このように「買い物というイベント」自体を共有しているのだ。

ビッグデータ解析を強みとし、現地に1500万人を超えるダイレクトマーケティング基盤がある「トレンドExpress」の濱野智成社長によれば、中国市場の特徴は「スピード」「ダイナミック」「メジャーリーグ」の3語に集約される。

トレンドワードに見る「スピード」感


日本で話題になった「爆買い」ブームは2015年ごろ。めっきり聞かなくなったが、ブームは去っていないという。

15年当時のビッグデータに浮上した用語は「代購」。代理購入の意味で、C2Cの個人販売を指す。これが、爆買いの実態だった。海外で個人が化粧品や健康食品、日用品や菓子などを仕入れ、それらの安全・安心なクオリティの品を「淘宝(タオバオ)」などのECモールで販売する構図。ブームの加熱とともに法人税や関税逃れの業者も多発、19年1月は当局の規制が入り、翌年のコロナ禍で海外渡航自体ができなくなる。

だが、悪質な業者が淘汰されたいま、健全なプレイヤーに需要が集中。「中国に『越境EC』で販売する流通が伸びている。従来の商品に加え、日本酒などの商品、あるいはアニメやフィギュアといったIP関連の商品も人気。安心・安全だけでなく、日本独自の文化に対する中国からの需要が高まった。爆買いは水面下で続いているのです」

国境をまたぐ越境ECが盛んな理由はテクノロジーの発達だけではない。代理購入者、いわゆるソーシャルバイヤーが活躍する素地は中国の商慣習にあった。

「信頼できる人との経済圏を『朋友圈』と言いますが、訳すと『友達経済圏』。あなたのおすすめなら買おう、という特徴です。つまり、人軸ビジネスが強い」

中国でSNSが爆発的に広まったのはソーシャルネットワークに重きを置く既存の文化があったから。C2Cが盛んなのも「信頼が担保されないモノは買わない」慎重さが影響する。海外の有名ブランドを好む気質も、信頼の裏返しだ。

文=神吉弘邦

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