ビジネス

2021.10.05

常識の「逆張り」で世界的ヒット。LAセレブが認めた日本人デザイナー

マクアケ創業者・中山亮太郎が、全国から見いだした期待のビジネスを紹介する連載。第9弾は、カニエ・ウェストらセレブも愛用する逆輸入ブランドに着目。


苦境が続くファッション業界において、ここ数年、際立った勢いを見せる日本発のブランドがある。トレンドも季節性も意識しない。コレクションショーもなし、自社店舗もなし。とにかく業界の常識の逆を突き進む、世界的人気ブランド 「READYMADE(レディメイド)」だ。

デザイナーの細川雄太が手がけるこの新興ブランドは、多くの面で常識に逆行しながらブランドとして垂直的に立ち上がり、アパレル不況といわれているなかでも売り上げが倍々に成長している。

一般的なファッション業界の流通構造として、大量の在庫を作り、日本中の大型ショッピングモールや繁華街での自社店舗出店、その後アウトレット販売という流れがいつの間にか当たり前になっている。

一方、READYMADEの場合は、セレクトショップ経由の販売がほとんどである。セレクトショップ自体も顧客への購入希望を元にした発注・仕入れを行い、残った一部を店頭で売り切れるまで販売する。生産されたアイテムの売れ残り廃棄がほぼゼロのため、無駄がないやり方だ。さらに驚くことに、世界で認められているブランドにもかかわらず、自社店舗をもたないという異色の展開をしている。

ブランドのデビュープロセスにおいてもユニークだった。

一般的なブランドは国内のメディアを中心にお披露目、もしくは10年前後かけてパリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンなどのコレクションを経て知名度とブランド価値を上げていくのが王道が、READYMADEは4大コレクションとは関係なく、ロサンゼルスの有名セレクトショップ「マックスフィールド」でいきなりデビュー。店の顧客である有名アーティストがプライベートでシェアしたSNSにより、ブランド名は数日で知れわたり、ブランドバリューの向上に成功した。

こうした経緯からか、READYMADEはリアル店舗のセレクトショップパートナーを大事にする姿勢を崩さずにいる。通常のブランドは、いかに自社ECに移行するかとさまざまな検討を重ねているが、彼らはいまも自社ECをもたず、あくまで「販売してくれるパートナー」を重視する。これも、世のD2Cの流れの逆をいくやり方ではないだろうか。
次ページ > トレンドより、価値観を共有したい

文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事