怒りから始まった。フェムテック「エルビー」創業者の静かな野心

エルビーの創業者タニア・ボーラー (c)Elvie


「ブラックロックの参加についても、とてもうれしく思っています。特に、今後2~3年でフェムテック企業として初のIPO(新規株式公開)を実現させるというミッションを前進させるうえで、多くの経験をもたらしてくれるはずです」
'/122817434/Fendi_SP_300x250'

それは野心的な目標だ。しかし、エルビーの製品である搾乳ポンプと骨盤底筋トレーナーは、同社の拠点である英国と米国でカルト的な人気を集めている。さらにボーラーによれば、2021年におけるエルビーの売上は1億ドルに達する見込みだという。

ボーラーは今回得たばかりの資金を使って、ドイツ、スペイン、中国などの10市場に事業を拡大する計画だ。また、一部の製品の拡充を見据えているほか、注力分野の幅についても、「妊娠第4期」とも言われる出産後から、出産前や閉経後などの他のライフステージへと広げることも視野に入れている。

「当社が現在進めているのは、女性たちに『頼れる行き先』を提供する製品エコシステムの構築です。要するに、アップルがしているのと同じようなことです」とボーラーは言う。「アップルも、まさにハードウェアからスタートしました。それがいまでは、製品、アプリ、サービス、アクセサリという4本柱を擁しています」


CES2020で披露されたウェアラブル搾乳ポンプ「Elvie Pump」(Getty Images)

いまでこそテック系創業者のような話しぶりだが、本人も認めているように、ボーラーはキャリア初期のころから、自分で会社を興して経営することを夢見ていたわけではない。彼女が惹かれていたのは、公衆衛生分野でもひときわタブー視されている問題だった。ウィメンズヘルス(女性の健康)の博士号をとり、HIV/AIDSの啓蒙と、安全な妊娠中絶へのアクセスに注力する仕事をしたいと思っていたのだ。

「18歳のときに聞かれたら、私が夢見る職業は、国連職員か、オックスファム(貧困をなくすことを目的とする世界的なNGO)のCEOと答えたでしょう。実際、その後、国連で夢の仕事につきました。けれども正直に言えば、政府や公共セクター、研究分野でのあらゆる動きの遅さに非常に苛立っていました。たぶん心の底には、せっかちな起業家精神があるのだと思います」

ボーラーは2013年、共同創業者としてエルビーを立ち上げた(起業パートナーは、スマート・リストバンドを提供するジョウボーンの共同創業者アレクサンダー・アセイリーだった)。きっかけは、出産後や閉経後の骨盤臓器脱(骨盤の筋力低下により、膀胱や膣などの臓器の機能に影響が生じる病気。失禁や、性交時の痛みの原因になる)に悩む人の多さを知ったことだった。

「予防可能であるはずの骨盤底の問題が原因で、女性の10人に1人が、人生の後半に手術を受けています。私はそうしたことに怒りを覚えるたちなんです」
次ページ > 「すごいことを証明したね」

翻訳=梅田智世/ガリレオ

タグ:

連載

BEYOND SYSTEMSーWomen 2021

ForbesBrandVoice

人気記事