怒りから始まった。フェムテック「エルビー」創業者の静かな野心

エルビーの創業者タニア・ボーラー (c)Elvie

上下関係、ジェンダー、社内外の枠組みなどに縛られずに、チームや組織、あるいは業界に多くの実りをもたらした女性たちは、何を考え、どう行動したのか。

Forbes JAPANでは、これまでの考え方や既存のシステムを超えて活躍する女性にフォーカスした企画「Beyond Systems」を始動。約3カ月にわたり、翻訳コンテンツを含めたインタビュー記事を連載していく。



2019年、ウェアラブル搾乳ポンプなどを手がける英スタートアップ「エルビー」が、女性が創業したフェムテック企業として史上最高額の資金調達をした。創業者は、経営者になるよりも「公衆衛生のタブー」に関心を持っていたタニア・ボーラーだ。

一度は国連で職につき、そこで感じた“苛立ち”から起業家に転身。順調に事業を広げるボーラーは、加熱するフェムテック分野でいかに“ひとり勝ち”を狙うのか──。


エルビー(Elvie)の創業者タニア・ボーラーは、「思いきってやる」ことにかけてはそれなりのことを知っている。ボーラーは2018年、ロンドン・ファッション・ウィークのランウェイで、自社のウェアラブル搾乳ポンプをお披露目した。

2019年には、公共の場での授乳をめぐる偏見を打破すべく、ロンドンの5カ所に、風船でできた特大の乳房を展示した。同じ年にエルビーは、シリーズB資金調達で4200万ドル(約45億円)を集めた。女性が率いるフェムテック企業の資金調達額としては、当時の史上最高額だ。


「エルビー」のウェアラブル搾乳ポンプをまとってランウェイに登場したモデル(2018年撮影、Getty Images)

そして2021年、ボーラーはみずからの記録を塗り替えた。エルビーは7月27日、シリーズCラウンドで8000万ドルの資金を調達したと発表した。女性が創業したフェムテック企業による初期段階の資金調達ラウンドとしては最高の調達額だ。今回のラウンドは、英国を拠点とする成長株ファンドのBGFが主導し、ブラックロック・プライベート・エクイティ・パートナーズが参加した。

この資金調達に関してボーラーは、「フェムテックがようやく、投資家に真剣に受け止められるようになったことを示すものだと考えています」と、Zoom越しにフォーブスに対して語った。そしてこの業界は、今後数年で500億ドル規模に到達すると見られていると付け加えた。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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