レイテンシーの問題
「Ball Metaverse Research Partners」の共同創業者であるJerry Heinzは、メタバースや、その実現に何が必要かを研究している。
Heinzによると、今日の巨大なデータセンターや、かつてなく高速なブロードバントネットワークでもメタバースに対応できないという。
「メタバースの実現において最大の課題は、非常に基礎的なレベルにある。高度にコンカレント（同時並行的）で永続性がある体験を、これまでに経験したことがない規模で実現するためには、レイテンシや帯域幅、信頼性の問題に行き着く。これらは、我々がネットワークの歴史において常に直面してきた問題と同じだ」とHeinzは話す。
アバターに信ぴょう性を持たせるには、ユーザーの表情や身振り、唇の動きをリアルタイムで投影させなければならない。それだけのデータ量を時間差なく送信するには、新たなネットワークインフラやプロトコル、規格が必要になるとHeinzは指摘する。
「Twitchでプレイするゲームとは異なり、リアリズムを追求するには低レイテンシーを実現しなければならない。少しでも遅延が生じるとリアルでなくなり、違和感を覚える」とHeinzは言う。
ビジョンを持つリーダーの必要性
ネットフリックスがコンテンツをユーザーの近くに置くように、今日のブロードバンドネットワークはCDN（コンテンツ配信ネットワーク）を使ってデータの移動距離を縮小している。メタバースは、ユーザーエクスペリエンスを台無しにしないために、これと似た“抜け道”を使う必要がある。
Heinzによると、フォートナイトのようなゲームは、プレーヤーがどこに移動するかをある程度予測することで、レイテンシが生じても体験が損なわれないようにしているという。メタバースでも、同じような技術が求められる。「レイテンシを減らし、ユーザーエクスペリエンスを向上するための抜け道を開発する必要がある」とHeinzは話す。
インフラの大規模な変更が必要なことから、本格的なメタバースが実現するまでにはしばらく時間を要するだろう。マーク・ザッカーバーグは、今後5年程度でフェイスブックをメタバース企業にすると宣言したが、Heinzはその時間軸での実現に懐疑的であり、もっと長い時間が必要だと考えている。
「メタバースの実現にはビジョンを持ったリーダーが必要であり、ザッカーバーグが5年以内にフェイスブックをその方向に導いてくれることに期待している。物事を前進させるには、とりわけインフラとコンテンツ制作において大胆なビジョンが求められるが、その可能性を信じることで驚くべきことが起きるものだ」とHeinzは述べた。
