日本流STEAMで脱「役に立たない教育」


未来の教室ではポータルサイトを立ち上げ、こうした「学びのSTEAM化」を加速させる「探究ネタ」のコンテンツを提供している。なかには、全国の教育現場で活用できる、ブリタニカ・ジャパン、東京大学、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)らが制作した「STEAMライブラリー」のような高品質な動画も。

扱われるテーマには、バイオジェット燃料やモビリティ5.0などの最先端技術もあり、生徒たちは社会や科学の課題を知り、探究の入り口に立てるようになっている。

EdTechで現実化する「学びの個別最適化」


1人1台端末環境の整備で加速する「学びの個別最適化」。浅野は通信制・単位制高校、小中の不登校特例校、特別支援学校のよさを組み合わせた学校が理想だという。

「ICTにより多様な内容を各自の計画とペースで学べるのであれば、学年や時間帯、場所の制約さえもはや不要。実際に福島県の大熊町立小中学校では、ICT教材Qubena導入による自学自習/協働を実現しており、外国籍や特別支援の児童も共に学んでいます」

同校が計画する新校舎は、図書館や学習空間を中心に、大学や企業のサテライトを外周に置くという。学びが拡大し、大学の研究や仕事に結びつく「未来の教室」を体現した象徴的な構造となる予定だ。

経産省によるEdTech導入補助金はすでに日本の全学校の2割の6800校が利用し、その6割が継続の意向だという。教育現場は確実に反応し始めているようだ。さらに9月1日から、浅野は新設されたデジタル庁の参事官を併任している。

「オンライン/オフラインの混在、学習ログによる標準授業時数の廃止など、目指すのは教育のアーキテクチャーそのものの書き換えです。デジタル庁はタテ割り行政を超えて制度を含めた教育DXを進めるチャンスをつくれると思います」


浅野大介◎2001年、経済産業省入省。資源エネルギーなどの業務を経て年教育産業室の発足を企画。18年より商務サービスグループ サービス政策課長兼教育産業室長。21年9月よりデジタル庁参事官を兼務。

text by Ryoichi Shimizu | edit by Akio Takashiro

この記事は 「Forbes JAPAN No.087 2021年11月号(2021/9/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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