「未来の教室」実証事業が目指す新たな教育のかたちとは
新型コロナウイルスのパンデミックはオンラインシフトを加速し、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」による1人1台端末環境は、2021年4月の時点で全国の小中学校で達成された。
ここから先は、いかにEdTechを活用し、未来を担うイノベーション人材を生み出していくかという具体的なステップとなる。そのグランドデザインとして経済産業省が描いたのが2018年度よりスタートしている「未来の教室」構想だ。
その経緯を、経済産業省に「教育産業室」を創設した浅野大介は、こう説明する。「これまで私は資源エネルギーや3.11以降の災害対応の仕事を経験したのですが、現場では学校で学んだ知識が生きていない事実を知って危機感を抱きました。
例えば避難所で安全に過ごすための対策は、中学校レベルの理科でほぼ解決できますし、暑さ・寒さ対策も電力などの必要エネルギーを計算することで解決が可能です。しかし理数テストでは高成績を収めているはずの人たちが、みな一様に、災害現場では立ちすくんでしまうのです」
学びと仕事の隔絶。時代の変化に向き合ってこなかった従来の学校教育の弊害だと、浅野は指摘する。
「“発見・創造する力”をもち、“AIやデータを活用する力”があり、自律的にアクションを起こせるチェンジメーカーが、日本や地域の未来を担うのです。しかしそうした人材を、いまの学校教育のままで生み出せるとは到底思えませんでした」
「未来の教室」プロジェクトは、従来の一方通行の集団教育を見直し、一人ひとりの「知る」と「創る」のサイクルを効率的に循環させる仕組みを構築する試みだ。
「起点はホンモノの課題に出合うこと。従来は『知識のための知識』を与えてきましたが、それでは生徒たちの興味は引けません。知識がどのように現実世界で生かされ、価値を生み出しているかがわかることで、生徒たちに好奇心が芽生えます。そして吸収した知識は、自分の力で“創る(アウトプットする)”ことで、生きた知識になります。その経験をもとに生徒は、さらなる探究を進めていきます。