ゴールドマン・サックスの最近のリポートによると、S&P500種株価指数に採用されている企業の足元の収益率は、1975年以降で2番目に高い水準にある。だが、ジョー・バイデン政権が計画する法人税率引き上げによって、収益の伸びにブレーキがかかる可能性が出ているのだ。
S&P500種株価指数に連動する上場投資信託(ETF)「SPDR S&P500 ETF」に投資している人にとって、懸念材料になるだろう。
ゴールドマンによると、S&P500種企業の自己資本利益率(ROE)は2021年第2四半期末時点で19.6%と、過去1年間に4.8ポイント上昇している。上昇の大部分は利ざやの拡大によるものだという。通常、ROEが高いほど株式の長期的リターンは高くなる関係にある。
ちなみに、直近4四半期にROEがとくに好調だった業界は、IT(情報通信)や消費財、金融となっている。
企業増税案で収益に暗雲
つまり、現状は良いのだが、問題は将来で、その見通しは曇ってくる。
ゴールドマンはリポートのなかで、ROEの見通しは2022年には「より厳しい」ものになると予想。税率の引き上げは、ROEの成長にとって「最大の逆風」になる可能性があると述べている。
バイデン政権の増税案には、法人税率を現行の21%から26.5%に引き上げることのほか、多国籍企業の海外収益に16.5%の税率を適用することなどが含まれる。
ゴールドマンによると、こうした税率変更が実行された場合、ほかの条件が変わらないと仮定すれば企業収益は5%悪化する。増税によるマイナスの影響を相殺するには、利ざやを0.75ポイント高める必要があるという。
利ざやの拡大は不可能ではないだろうが、実際には難しそうだ。来年、米国の企業の利益率がさらに高まるとは、期待しないほうがよいということだ。
そもそも、1975年以降、ROEの向上をもたらしてきたのは主に減税だったという点も、米国株に投資している人にとっては懸念されるところだろう。ROEが低下すれば、株式投資のリターンも下がってくることになる。