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2021.10.02

英国のワクチン接種を支えるスタートアップ「AccuRx」の実力

Victoria Jones - Pool / Getty Images

英国の起業家のJacob Haddadのチームは、3年前に「AccuRx」というスタートアップを設立し、かかりつけ医と患者がテキストメッセージで連絡をとるサービスを始動した。同社のシステムは、パンデミックを契機に英国内のクリニックで急激に普及した。

英国の国民健康保険(NHS)は、地域のかかりつけ医で新型コロナウイルスワクチンの接種ができるキャンペーンを2020年末から開始した。英国では、長年かかりつけ医がインフルエンザの予防接種を行っていたが、新型コロナのワクチン接種は規模がはるかに大きく、オペレーションも複雑で、病院スタッフは作業に忙殺されていた。AccuRxにとって、こうした状況を打開することが大きな課題だった。

「多くの医師が、インフルエンザワクチンのような電話予約方式だと、スタッフが対応に追われて他のサービスを提供できなくなってしまうと訴えていた」とHaddadは話す。そこで、彼のチームは医師が患者にメッセージを送信でき、接種予約の管理や接種を逃した人を追跡できる予約システムを2週間で開発した。

ロンドン本拠のAccuRxは、2020年12月にこの新システムの提供を開始した。これにより、患者はオンラインでワクチン接種の予約ができるようになり、クリニックは作業に専念できるよなった。英国は今冬、3000万人を対象にブースター接種を行う計画で、AccuRxのチームは現在その準備に追われている。

AccuRxのロンドン事務所に勤務する約120名の従業員は、これまでに2100万人分のワクチン接種予約を支援した。英国では、約6700万人の人口のうち4400万人が2回の接種を終えている。

「ワクチン接種キャンペーンがうまくいった理由は、かかりつけ医が課題解決に優れていることに加え、我々のシステムによって多くの手作業を省くことができたことにある」と、フォーブスの「30 Under 30」のサイエンス&ヘルスケア部門に選出されたHaddadは話す。

政府の方針が次々と変わる中で、ワクチン接種の運用は複雑だったが、「AccuRxの予約ツールによって医師は最新の状況を把握できた」と、NHSの Doncaster CCG & Integrated Care Partnershipでデジタル担当のディレクターを務めるKatie Dowsonは指摘する。

AccuRxは9月15日、シリーズBラウンドでLakestarやBritish Patient Capital、Atomicoなどから3800万ドル(約41.7億円)を調達したと発表した。同社は、規模の大きな病院や外来患者向け診療所、薬局などにも同じツールを導入していく方針だ。
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編集=上田裕資

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