そのために6curryではまず、「お店でご飯を食べる価値」を再定義した。従来からあった「人と人が出会って、自分ひとりの食事だけでは得られないような予想外の出会いを起こすこと」に、「つくり手や生産の場に居合わせて、食べるだけではない“食”に触られること」も加えた。
つまり、「食べ手どうしの交流」だけでなく、「つくり手」も入ったコミュニティとすることで、食べ手とつくり手の“MIX”を起こしたいという考えだ。
これを形にするため、2021年8月に恵比寿店をリニューアル。感染対策のためカウンターの席を間引いて約半分にしたほか、調理過程が見えやすいようにカウンター内部も改変し、スパイスカレー、スイーツにまつわるアイテムを楽しめるように飾り棚を設置した。
内装のテーマは、「自分らしく生きる人が集まる恵比寿の家」。「通常の飲食店と同じように“提供者”と“お客さま”にならないよう、家の中で誰もがフラットな状態であることを表現しています」ともりゆかは話す。
リニューアルした店内
交流できる“一期一会の場”を提供
そして9月4日には、リニューアル後の目玉となるフルコース「一夜限りの晩餐会」の提供をスタートした。新鮮な魚・肉・野菜とスパイスを使った料理を楽しめる「スパイスカレーの晩餐会」(1万2000円)と、甘さとしょっぱさを交互に楽しめる「スパイススイーツの晩餐会」(1万円)との2種類のコースを用意している。いずれも料理6品+ペアリングドリンク4杯で構成される。
レシピは、若手実力派シェフとパティシエの計4人が考案。6品すべての料理にスパイス(クミン、カルダモン、クローブ、ターメリック、マスタードシード、コリアンダー)を使用し、2カ月ごとに変わる「テーマ食材」の魅力を引き出す調理法で提供する。締めは晩餐会限定のスペシャルカレー。その日限定のメニューなので、ゲストも料理も一夜限りの“一期一会の場”が生まれるというわけだ。
「一夜限りの晩餐会」のメニューは、毎回異なる。裏面には6種類のスパイスについてのオリジナルの解説が書かれていた。
フルコースに挑戦した理由について、6curry コミュニティクリエイターの廣瀬彩は「皆が一定のスペースを確保したまま、ゆっくりと時間をかけて交流する体験を提供できるので」と説明する。
「一夜限りの晩餐会」のスタートは18時。キッチンを取り囲むテーブルに集った最大12人のゲストに、料理を提供するだけでなく、ホストが食材の由来や生産者の想いを語ったり、シェフが調理法のこだわりを解説したりする。
偶然集まったゲストどうしの交流が生まれるように、自己紹介やクイズなどコミュニケーションを誘発する仕掛けも行っている。実際に、ゲストどうしの座席が離れていても、帰り際に声をかけあうなどして交流が生まれているという。
開催は、毎月3回のみ(第3月曜日*祝日の場合は第2月曜日、第2・4日曜日)。完全予約制だが6curryの会員以外も参加可能で、一度参加すると、その後1カ月間の会員体験も付与される。会員専用のSNSでの交流も可能だ。