Close RECOMMEND

ドクター本荘の「垣根を越える力」


「Hippoのオフィスで自社の紹介をして、何か一緒にできるといいですねと話すと、一緒に保険会社をつくらないかといきなり言われたんです。しかも2週間で決めて欲しいと。普通は何を言っているんだと思いますよね」

当時のHippoは、自社で保険証券を発行できず、外部の保険会社に頼っていた。しかし、すごい勢いで伸びるHippoに対して、保険会社が対応できていないことに不満を持っていた。そこで、売りに出ている保険会社を一緒に買おうという提案だったという。

すぐに佐藤は東京の本社に相談したが、「あり得ない!」と言われて相手にされず、翌日、Hippoに断りに行った。するとアサーフCEOからは、「こんなに素早く対応してくれてありがとう。もっと会社のことを教えて欲しい」と言われたという。

その後も佐藤は、「米国でHippoと保険会社をつくりたい」と日本の本社に思いを伝え続けた。すると理解を示す役員も現れ、やがて本社に検討してもらえるところまで漕ぎ着けたという。

null
Getty Images

アサーフCEOからの共同買収の提案から3カ月が過ぎた2019年のクリスマスごろ、佐藤がHippoを訪れて、「いまさらですが、一緒に何かやりましょう」と伝えた。するとアサーフCEOが、「実は調べたら妙な情報が出てきて例の買収案件はやめて、別の会社を買うことを考えているが、どう?」という答えが返ってきた。

この間、Hippo側は佐藤のレファレンス(その人のバックグラウンド)チェックを進めていたようで、その結果が良好だったことも、この新たな提案に繋がっていたという。

佐藤は、アサーフCEOの提案に対して、「返答には3月ころまでかかるが、それまで待てるなら共同買収やりましょう」と即答。年明けから本社のいくつかの関係部署と話を始める。「面白いね」と皆が興味を示してくれたが、なかなか決まらず、コロナ禍で一時ストップとなってしまった。

「嫌でした、謝りに行くのが。アサーフCEOを前にして言葉に詰まっていたら、彼のほうから『コロナでストップか?』と言われて、話は断ち切りに。仕事で悔し涙を流したのは初めてでした」

結局このとき、Hippoは候補の会社を単独で買収した。

提携でシリンバレーへの「入場券」を


しかしその後も佐藤は諦めずに、2020年7月のHippoの資金調達にはマイナー株主として参加し、本格的なアライアンスに向けた第一ステップを踏んだ。そして、「Hippoと戦略的に連携して十分な価値を得るには、まとまった出資をするべき」と佐藤はまたも本社に提案した。ここから、CVC(企業のベンチャーキャピタル)の分散投資から、資本業務提携へとテーマは移る。

「とにかくいろいろと大変でした。私が熱く語っても、その確実性を証明できない」と佐藤は言う。個人が探索して面白い会社をみつけたと言っても、それがどうしたとなる。多くの大企業では、ここから先に進めるのが至難の技なのだ。

文=本荘修二 編集=松崎美和子

ユニコーンDXAI
この著者の記事一覧へ

PICK UP

あなたにおすすめ