29カ国で平均寿命が第2次大戦以来のマイナス、米国に最大の影響

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新型コロナウイルスのパンデミックは第2次世界大戦以降、最も大きく各国の平均寿命を短縮させる要因になっているもようだ。英オックスフォード大学の調査によると、最も大幅に寿命を縮めたのは、米国人となっている。

同大学の研究チームが先ごろ疫学ジャーナル「International Journal of Epidemiology」に発表した調査結果によると、人口統計データを調べた29カ国のうち、2020年の平均寿命が前年と比べて変化していなかったのは、デンマークとノルウェーのみだった。

寿命の低下が特に目立ったのは、スペイン、英国、イタリア、ベルギーなど西欧の各国だ。だが、男性、女性ともに最も大きく寿命を縮めたのは米国で、前年と比べてそれぞれ2.2歳、1.65歳短くなっていた。研究チームは、新型コロナウイルス感染症の流行により、生産年齢の死亡率が大幅に上昇したことが一因との見方を示している。

性別でみると、調査対象とした国の大半で、寿命のマイナス幅は女性より男性の方が大きくなっていた。男性の寿命は11カ国で、1歳以上短くなっている。女性の寿命に同様の変化がみられたのは、8カ国だった。

米国に続いて寿命が短くなっていたのは(マイナス1.5歳以上)、女性ではスペイン、男性ではリトアニア、ブルガリア、ポーランドだった。

論文の共同筆頭著者の一人は、各国の寿命が1歳延びるには平均5~6年がかかるが、コロナ禍は2020年の1年間で、寿命の面におけるそれまでの前進を「一気に消し去ってしまった」と指摘している。

早期の介入がカギ


平均寿命が低下していなかったのは主に、「公衆衛生的介入」を早期に実施した、しっかりとした医療制度が整備されている国だ(女性の寿命だけ大きな変化がなかったフィンランドを含む)。

米国の寿命のマイナス幅が最も大きかったことは、驚くべきことではない。新型コロナウイルス感染症による死者数はその他のどの国よりも多く、感染者・死者が(医療に関するその他の多くの問題と同じように)有色人種の国民に偏っているといった問題もある。

今年6月に発表された研究結果でも、米国の平均寿命は英国やスウェーデンをはじめとするその他の高所得国と比べ、大幅に低下していることが報告されていた。

各国に先駆けてワクチンの接種を開始し、十分な供給量を確保し、すべての成人(そして子どもたちの多く)が接種を受けることが可能な状況であるにもかかわらず、依然として多くが未接種の米国は、入院者数と死者数の急増に直面している。

編集=木内涼子

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