思考力が「外遊び」によって鍛えられるのはなぜか|高濱正伸 #1

提供=花まる学習会

小学生や中学生という年代から、起業や高度な研究にチャレンジする子どもたちがいる。彼らはどのように才能を開花させてきたのか。そのストーリーに迫る連載「U15 才能開花の原点」。今回から2回にわたって、花まる学習会代表の高濱正伸が、約30年の現場経験による独自の観点で、子どもたちの思考力を伸ばす環境や、成長の土台となる「家庭」の作り方を解説する。


もう30年以上も前、社会に出ていけない若者が大勢生み出されていることを知った。

学校では横一線の教育がなされ、自分の関心事よりも学校の勉強に真面目であることが評価され、おとなしくしていれば褒められる。弱肉強食の世界を知らないまま育ち、いざ職につくと、「心が折れた」「傷ついた」と仕事を離れてしまう。

この国の教育に大きな問題が横たわっていると感じ、学習塾という民間教育の枠組みで「花まる学習会」を開いた。

標ぼうしたのは「メシが食える大人・モテる大人に」。まずは自立=自分の力で稼げることを目指し、その上で、魅力的な人を目指してほしい、という思いを込めた。

「〇〇中学□□名合格!」という競争で仕事をするのが、それまでの予備校・学習塾業界の基本枠であったから、当時はちょっと変な塾だと思われたであろう。

思考力に不可欠な2つの力


より自立し、魅力的な人生を送れる子を育てるために私が注目したのは、第一に「思考力」だ。学校のテストにも直結する能力だが、要は人生全般で、自分の感性や気づきに注目し、主体的に考え抜く力である。そして、その核心が「見える力」と「詰める力」であると分析している。

「見える力」とは、一言で言えば「見えない大切なものが見える力」。同じように新聞やテレビ、世間を眺めていても、その本質は何かと問うと百人百様に違う。本質・要点・アイデア・解決策・目指すべきゴール・相手の気持ちなど、見えないけれども大事なことが、どうクッキリとしたイメージで捉えられるか。

「詰める力」とは、今度はイメージが見えたとして、最後までやり切ることや、意志の力、論理的に誤ったステップを踏まないような集中力など、根を詰めるような能力のことである。

それまで「学力」と思われていた計算力や知識の記憶力といった認知能力ではなく、脳のCPUのような能力に注目したということだ。

注目した第二は、野外体験である。「見える力」と「詰める力」を実質的に上げるのは、子ども時代の「遊び」と「生活」であると見定めた。特に外遊びは、仲間内でケンカして落ち込んだり、理不尽に遭遇して葛藤することで、心の耐性がつく。2つの力を向上させる最も効果的である「外遊び」が、子どもたちに足りていないと考えた。

しかし公園で遊ぶと言っても、実際は「この公園でボール遊びをしないでください」という類の禁止事項だらけ。何か事故が起きれば、市役所や学校が訴えられる。

田舎育ちなら当たり前であった、川原に行ってダムを作ったり、川に飛び込んだり、魚を捕まえたり、森に入って秘密基地を作ったりといった遊びを、「自分の意志・意欲にしたがって」「決めて」「やりきる」という自由な経験ができていない子が大半である。
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文=高濱正伸 編集=露原直人

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