コロナ禍に「ヨットで」日本入国。カナダ人経済学者の奇策

わが子に会うため、2年連続で「ヨットで日本入国」したコリン・ローワット氏(英・バーミンガム大学准教授)


そして今年7月、ローワット氏は再度、ヨットで日本へ入国を果たした。

現在、日本では海外からの入国規定として、全ての国・地域から入国する人に、「検疫所長が指定する場所(自宅など)で入国(検体採取日)の次の日から起算して14日間待機する滞在場所を確保し、そこで待機して、外出できない」が求められているが、対象の国・地域に2週間以内に滞在していた外国人は日本への入国を拒否される。

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今年もヨットで入国したローワット氏(左から2人目)と乗組員たち。ローワット氏が来ているボーダーのシャツはセルゲイ船長からの贈り物だ。

今年もロシア経由、ヨットで日本に入国し、無事わが子に会えたというローワット氏に、都内で話を聞いた。

ちなみに今年は前回(去年)よりも早い6月19日にロンドンを発ち、ウラジオストクには6月21日に到着、同日に出航し、福岡に7月6日に着いた。7月22日までは隔離されたという。

──前回も今回も2週間を超える航海だったが、船酔いはしなかったのか?

船酔いの薬は持って行ったけれど、去年も今年も使わなかった。

──船の上で日常的にしていたことは?

毎朝、日本語のテキストで日本語の勉強をして、その後、自分の研究論文に取り組むようにしていた。

──ウラジオストクを出航後は、燃料や食糧補給での寄港もしなかった?

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都内某所にて

日本政府が出している、入国拒否対象となる国での滞在歴が過去14日間ないこと、という要件を満たすため、一切寄港も上陸もしなかった。ただ韓国の水域では、2回目はSIMカードを持参していたのでインターネットを使った。1回目はWifiを使った。

──前回と今回は同じ船で同じ船長?

去年はディマンの船で彼が船長だった。今年、ディマンはクルーとして参加し、別の60代のロシア人男性、セルゲイが船長で、セルゲイの船だった。セルゲイとのコミュニケーションではグーグル翻訳を使ったり、他のクルーが通訳をしてくれたりしたが、セルゲイは英語がうまくなりたいと、私から英語を習っていた。

ちなみに今回のクルーの1人は、6代目ジェームズ・ボンドを演じたイギリスの俳優、ダニエル・クレイグにそっくりだった。

──前回の航海では毎日、予想外の発見があったとのこと。今回もあったか? できれば「経済学者としての発見」が何かあれば。

今回は2回目ということもあって「毎日の発見」はあまりなかった。でも、今回の航海は、複数の主体の存在する状況下での意思決定について研究する​​「ゲーム理論」が説く、相互協力の論理が機能したように感じた。

一度きりではなく継続した関係を築くなかでは、相手に親切にすることは結果として、相手だけではなくお互いにとってメリットになる。まさにゲーム理論の「繰り返しゲーム」だ。
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コーディネート・取材=高以良潤子 文=石井節子

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