コロナ禍に「ヨットで」日本入国。カナダ人経済学者の奇策

わが子に会うため、2年連続で「ヨットで日本入国」したコリン・ローワット氏(英・バーミンガム大学准教授)


──乗員とはどんなコミュニケーションをとっていたか?

前回は3人のクルーと、今回は4人のクルーとの旅だったが、いずれもみんな、私をどこか違うリッチな世界から来た人としては扱わず、チームの一員として接してくれた。今回のクルーからは、別れるときにボーダーのシャツという嬉しいプレゼントももらった。

興味深かったのは、元消防士のクルー(ダニエル・クレイグ似の)がいて、彼はドストエフスキーを愛読しており、船でも読んでいて、本を胸に乗せて昼寝していることもあった。

また前回、料理を担当していた英語の話せないアレックスもいいやつだった。熊のようにがっちりとしてガタイのいいロシア人。私の調子が悪いのを見てとると「寝る」を示すジェスチャーをしてくれたり、食べ物を手づかみで私の口に押し込んでくれたりした。

──前回は持ち込まなかったが、今回の航海で持って行った所持品はあるか?

前回とは時期が違って暑い時期だったので、サングラスとスカーフを追加で持って行った。

また、今回は、前述のように韓国の通信会社のSIMカードを持って行った。SIMカードは入国時のパスポートのスタンプの番号などを入力してアクティベートする仕組みだが、今回、韓国には入国しないため、事前に通信会社に連絡して、先にアクティベートしてもらった。

今年は前回よりも持ち物は少なかった、前回の経験があって、あまり心配をしていなかったから。例えば去年はセイリングトラウンザーとジャケットを持って行ったが、今年は船にあることがわかっていた。去年も持っていったスポーツ用のビデオカメラ、GoProを、今年は新調したよ。

あとは、ジョークで、26種類ある国際信号旗のうち、「黄色」の旗を持ち込んだ。黄色い旗はモールス信号で「Q」の意味。Qは「Quarantine(コロナ禍の欧米でよく使われるようになった言葉、「隔離」の意)」の頭文字にあたるからね。

──この航海、もう1回やりたいか?

ノーだね。なにせ高くつくし(笑)。いつか、子供を連れてだったらまたやってもいいけれど。でも、ウラジオストクに乗員たちのいい友だちができたのは本当によかったよ。

──日本のビジネスパーソンになにかメッセージは?


コロナ禍で、これまでできていた多くのことができなくなっている。その中での問題解決の例として、今回の私の発想や経験を参考にしてもらえればうれしい。もしリクエストがあれば直接、よろこんで、日本の企業のみなさんの前でお話しするよ。

注:ローワット氏は英国を経つ前に2回のワクチン接種を済ませた上、PCR検査で陰性を確認している。また福岡に到着後はヘルスチェックを受け、福岡で2週間隔離された。

コーディネート・取材=高以良潤子 文=石井節子

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