コロナ禍に「ヨットで」日本入国。カナダ人経済学者の奇策

わが子に会うため、2年連続で「ヨットで日本入国」したコリン・ローワット氏(英・バーミンガム大学准教授)


──他にも今回と前回で違ったことは?

1回目の去年は3人のクルーと一緒に旅をして、素晴らしい時間を過ごした。人生での最高の体験の一つだった。

それに比べると、今年の2回目の旅は、どちらかというと「通勤」のような感じだったかもしれない。既知の道を辿る形になってしまったので、実際に出発するまではやや失望混じりだった。出発してみると、去年とはまた違う素晴らしい旅になったのだが。

実は1回目の旅の後、日本政府が公開する情報をずっと追いながら、違う方法で日本への入国が可能かどうかを探し続けていた。でも、その間もずっと日本政府は、特段の事情がない場合、100以上の対象国への滞在歴が過去14日間にある外国人を入国拒否の対象とし続けていた。

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セルゲイがチェアマンを務める「the Far Eastern Sailing Federation」から贈られた名誉メンバー証。友情の証として

今年の5月に、タイに14日滞在すれば日本に渡航できることがわかったが、日本政府は5月下旬、なんとタイも入国拒否対象国リストに追加したので、タイ経由の望みが絶たれてしまった。

そこで、去年の船長だったディマンに再度連絡して、同じ航海ができないか打診した。あるいは、同じニーズのある人を募ってコストを折半するなど、より良い方法があったかもしれないが、それも叶わず、同じ方法で単身渡航することになった。

結局、前回の旅から今回までの9カ月間をかけたリサーチが失敗して、またまた古い、アナログな技術に頼って上陸することになったよ。参考:「新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について」(出入国在留管理庁出入国管理部審判課)

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彼らがヨットで進んだ航路のイメージ

前回は全く初めてで、周囲からはずいぶん心配もされた。医師である父の患者に、SAS(イギリス陸軍の特殊部隊)オフィサーがいるのだけど、彼にすら「危険すぎるからやめたほうがいい」と言われてね。さらには9月でまだ暑く、時期的に台風の危険もあり、また、船上での毎日でもどのくらい水を消費していいかわからないなど手探りで、まさにアドベンチャーだった。

一方、今回は台風の時期でもなく、ものごとが想定内に収まったこともあり、前回のように難しい部分が少なく、リラックスできた旅だった。

また、前回の航海では、船は多くの部分をモーターで動いていたが、今回は風に恵まれ、セイリングが中心の旅になった。イルカとの遭遇も楽しかったし、北朝鮮海域の海で泳いだりもした。

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コーディネート・取材=高以良潤子 文=石井節子

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