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2021.09.29

ナイキの児童労働問題で表面化「サプライヤー配慮」の歴史と現在地

oil palm plantation / Getty Images

企業の持続可能性を高めるためには、サプライチェーンへの配慮は不可欠だ。SDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」を達成するためだけでなく、ESG投資においても重要視される傾向がある。

「企業が、原料の調達先から製品の販売先までの“サプライチェーン全体”の責任をとる動きは、20世紀終盤から話題になり始めました。近年はSDGsの策定などによって加速しています」

そう話すのは、農水省・環境省などを経て、伊藤園の常務執行役員 CSR推進部長としてサプライチェーン・マネジメントを推進した笹谷秀光(現・千葉商科大学基盤教育機構 教授)だ。

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ナイキの児童労働問題で表面化


発端となったのが、1997年に発生した米スポーツメーカ・ナイキの児童労働問題。同社が製品の製造を委託するインドネシアやベトナムなどの東南アジアの工場で、児童労働や劣悪な環境での長時間労働などが発覚したのだ。

つまり、発展途上国の労働者からの「搾取」によってビジネスが成り立っていたことになる。この事態を受けて米国のNGOがナイキの社会的責任について批判し、世界的な不買運動につながった。

さらに最近では、2013年にバングラデシュで縫製工場が倒壊し、従業員など1133人が死亡した事故が、社会的に大きなインパクトを与えた。事故原因は多くの縫製工場の入居に対応するため、違法に増築されていたこと。世界中の衣料品メーカーが世界最低水準の人件費を求めて同国での生産を選択していたことが、背景にあった。

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倒壊したバングラデシュの縫製工場「ラナ・プラザ」跡(2015年) / Getty Images

こうした社会の流れを受けて、消費者や投資家が「商品を購入したり、企業に投資をしたりすることで、知らず知らずのうちに人権侵害や環境破壊に加担している事になるのは避けたい」と考えるようになった。

「そこで企業には、川上(調達)から川下(販売チャネル)までを対象に、責任あるサプライチェーン・マネジメントが求められるようになったのです」(笹谷)
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文=田中友梨

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