同グループの環境に優しい取り組みは、当時はPPRであった同社が環境・社会的責任を会社の価値の中心に据えて倫理規定を策定した1996年までさかのぼる。同社は2003年、環境への影響を報告するため初のサステナビリティー担当チームを発足させ、2007年には高級品業界でいち早くサステナビリティー担当部署を立ち上げた。
また同社は2013年、環境に優しい布地を調達し、こうした繊維の開発を支援するためマテリアル・イノベーション・ラボ(MIL)を設置している。
ケリングは2017年、ダウ・ジョーンズのサステナビリティー指標(DJSI)において、繊維製品・アパレル・高級品部門で3度目の1位に輝いた。また同社は、カナダ金融情報誌コーポレート・ナイツ(Corporate Knights)が世界で最も持続可能な企業100社をまとめた「グローバル100」でも、世界で最も持続可能な繊維製品・アパレル・高級品企業となった。
ケリングは2020年、リサイクルされた材料から非木材パルプをベースとした代替セルロース繊維を開発することを目指す「フルサークル・テキスタイルズ・プロジェクト(Full Circle Textiles Project)」に、複数の企業パートナーと共同で参加した。また2008年に発足したケリング財団は、地元あるいは国際的な非政府組織(NGO)の支援や社会的起業への資金提供、意識向上運動の実施により女性に対する暴力と闘うことを目指している。
持続可能な高級品を手掛ける著名デザイナーのステラ・マッカートニーは、約20年にわたりケリングと協業し、ケリングがより環境を意識する取り組みを始めたきっかけになったと考えられている。マッカートニーは2019年にケリングを去り、同社の競合である仏高級ブランドのモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)に移っている。
ステラ・マッカートニー(Getty Images)
創造性を戦略の鍵とするケリングでは、同社ブランドは未来の高級品を持続可能かつ責任ある方法で作りつつ、創造的表現の限界を模索することが可能だ。ケリングの2020年の従業員数は3万8000人以上で、売り上げは約131億ドル(約1兆5000億円)だった。